「エゴで作品を作った結果、それが大衆に響かない事実を「君たちはどうするのか」」君たちはどう生きるか かずくんさんの映画レビュー(感想・評価)
エゴで作品を作った結果、それが大衆に響かない事実を「君たちはどうするのか」
さて、始めに言おう。
この映画に何も期待してはいけない。
この映画にテーマというテーマを求めてはいけなかった。
「君たちはどう生きるか」というタイトルから連想するような、
「死」、「再生」、「均衡」、「前進」⸺。
それらの要素をそれっぽく配置しただけの「エゴ」による物語に、僕等観客は意味を見出さなければならない。
眞人君の成長譚?
母の死を乗り越えて力強く生き抜く成長の物語?
いやいや、まだ考えが甘い。
これは「監督自身が目的を見失ったように」、
僕等が都合良く解釈出来るような物語では無かった。
少なからず残る謎は3点。
1.序盤で眞人君が付けた傷の役割
2.夏子さんの立ち位置
3.実の母親が火の神である必要性
1に関しては作中では、
彼自身の「悪意の象徴」として役割を果たす。
…ということが言いたいのではない。
「それが何故世界の均衡と関わらないのか」。
結局大叔父様がお守りになられた世界は、
あのインコの王様がオーバーキルしたことで崩壊した。
それは眞人君が乱したものではなく、
「第三者による穢れ」が入ったこと。
…んで?それが何?
「悪意が美しき世界を崩壊させる」ならよくわかる。
それが血縁関係者なら尚更意味が持てる。
だって散々「血縁関係…血縁関係…」煩かったもんねー。
で?実際は第三者が介入して呆気なく壊れた。
大叔父様メンタルボロボロやんけ。
そんな簡単に崩れゆく世界を何故長年保てた。
大叔父様は鉛筆で積み木を叩いて揺らしてたし、
リスクを理解ってそれをしているのは如何なのか。
(そもそも、インコの王様要らないじゃん)
2はもう何もわからない。
実の母親との姉妹関係にあって、
非常に似ているというのはわかった。
…だから何?
産屋というのがどういう歴史か調べた上で、
余計に苦しめられたのだが。
忌み嫌われるから隠居したのか?
1回もそんな描写無かったよね?
「穢らわしい」とかそんなこと言われなかったよね?
寧ろみんな労って愛を尽くしてたんだよ?
それを自分の責任で森に入り込んで、
眞人君やお姉さんを巻き込んだんだよ?
何この立ち位置?
要らないよね。
もし彼女が子供を産むことに抵抗していたのであれば、
「私は穢れの象徴」と感じてあの世界に閉じこもった経緯になるのになぁ。
そうじゃなく、寧ろ子供が出来て喜んでたよね?
普通に眞人君がお母さんの死を乗り越える話に留めてよかったと思うけど。
3は…うん、まぁそれっぽい立ち位置なのに活かしきれてないよね。
あんなに序盤の火事をトラウマに感じていた眞人君が、
なんかあっさり乗り越えてるからさ…深みが無いんだよね。
若い頃の母親にしろ、
眞人君からしたらもう既に失った人なんだよね。
なんかあっさり仲良くなる上に、
終始「夏子さんが…」ってノイズを撒くもんで、
親子間の絆というかを全く持って伝わない。
(お父さんとの関係?
聞くな、あれはもっと違う問題がある…)
だからこそ、終始「炎の能力強いんだねー」としか言えない。
息子を護るという母親の強さ?
いや、それすら感じなかったのだが。
お母さんが送った小説とも絡んでこないし、
まだ話の中で「お母さんが小説で伝えたいこと」がわかるのであれば、比較が出来たのに…。
取り敢えず「エゴの押し付け」を全面に行った結果、
意味のわからない映画を作り上げた。
作画や音響が素晴らしいのは言うまでもないが、
単に「ジブリだから」と片足を突っ込んだから抜けなれなくなる。
青鷺も「最初の友達」というポジショニングなだけで、
序盤の匂わせとか不要だろ…。
本当にこれが「眞人君の成長譚」として描かれていれば、
まだなんとか解釈してるよ…。
「初めての友達」、「新しい母親」、「正義感に支配された父親」、「おばあさんたちの優しさ」、「新しい命の誕生」⸺。
彼にとっての冒険に介入した人物を、
これでもかと掘り下げなかったのはある意味素晴らしい。
話に引き込もうとする気がないようにしか思えない。
千と千尋やアリエッティ、マーニーやハウルのような話をすべて取り敢えず混ぜ込んで、
適当に成形した「脚本」という生地を、
「映画」というオーブンにぶち込んで、
その中で「音当て」やら主題歌を決め、
ちょっと焦げた部分は「僕の作品だ」とドヤ顔。
公開前の番宣をせず、
いざ公開したら生焼けのパンを提供したわけだ。
それを監督は「私でも意味がわかっていない」とは…。
おいおい…そんなんで理解しようとするほうがきついぞ。
せっかく2時間も使ったのに、
僕の記憶は「白いホワホワかわいいー」だぞ?
どうか頭のいい方々、
この作品を観て正当な評価を下してください
【7/17 追記】
翌日に冷静になって考えてみたが、
なぜこの作品の評価がまっぷたつなのか。
恐らく、「眞人くんに一切感情移入出来ないから」だと思われる。
母親を亡くし、トラウマに苛まれながらも、
夏子さんを救わなければならない。
その過程で突然「夏子母さん!」と言うが、
なぜそうなる。
お前その過程でなんか成長したか?としか言えない。
よく考えれば、あの場面で引き止めるだけに「夏子母さん」としか言っていない。
「なぜ今まであまり気に喰わなかった夏子さんをお母さんと認めたのか」という描写が一切無く、
全くもって深みもないからではないだろうか。
そういった内容も無く2時間引き伸ばして、
可愛い生物を無駄に良く描き、
「宮崎の作品は終わっても、君たちがその意志を継げ」と適当に畳んだろうな、と。
正直この作品を通して、
宮崎監督の伝えたいことは一ミリも理解出来ない。
適当に〆られた話をポケットに突っ込んでおけと…なるほどね
コメント有難う御座います。
確かに僕の予想に反して、
戦略的にも話題性があるようで、
売上もかなりいいみたいですね。
只そこまで大絶賛…というわけでもなさそうですので、
矢張り「映画単体として」ストーリーラインを追いかけると…、
説明不足が否めないのかな、とは