劇場公開日 2023年7月14日

「宮崎駿の贖罪」君たちはどう生きるか HKさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0宮崎駿の贖罪

2023年7月15日
Androidアプリから投稿

悪意に溢れ歪んだ世界でどう生きていくのか。この作品はアニメーションを作り続けてきた宮崎駿の最後の贖罪の物語ではないのか。
主人公・眞人は裕福でありながら、それは父が戦時中に兵器(零戦の上の部分)を作っているからである。滑らかな曲線のボディを眺め美しいと思いながらも、この世界の歪みを感じる眞人。
母が亡くなった後、父はその妹である夏子を後妻とし子供を身篭る。兄弟だから代替できるものなのか。また、夏子の家は名家であり2人の結婚は勿論純粋な愛だけでない事もわかる。そう考えると夏子の言動に納得出来る。
そして眞人自身もある行為をし「悪意」を行う。
作中には現実世界の悪意と歪みが随所に出てくる。そしてそれに気付いているのは眞人だけではない。もちろん夏子も気付いているし、その他の人も言葉にはしないだけで各々がその歪みと悪意とを秘めている。
では大叔父さんが作ろうとした世界とは何なのだろうか。それは悪意のないユートピアであり、文学を読み漁っていた大叔父の作る世界とはフィクションの世界ではないのか。
すなわちそれは宮崎駿にとってはアニメーションを作ることである。しかしフィクションには功罪がある。「功」とは勿論今までも多く語られているし、自分たちも十分体感できている。しかし「罪」の方はどうだろうか。有名な話でトトロの例を挙げると、宮崎駿は対談で60回以上トトロを見ている子供に「危険だ、バーチャルでなく本物の自然と触れ合って欲しい」と発言したそうだ。ここにフィクションの「罪」の部分があるのではないか。もちろんアニメーションでも何でも、物語は生きる力になるが、そこに没入し過ぎてしまい現実が見えなくなることがある。
その一人こそが大叔父であり現実から逃げることで、フィクションの世界を作り上げる。そして眞人に継承させようとする。しかし「君たちはどう生きるか」を読み冒険をした眞人はこれらの悪意と歪み(現実)を直視した上で、この世界で生きていく事を選ぶ。ここに宮崎駿の最後のメッセージがあると思う。
大まかなテーマはこんな感じだと思うが、まだ細かい所まで解釈しきれていない。

にんじん
ゆきさんのコメント
2023年7月15日

こんばんは。

HKさんのレビューを拝見し、鑑賞中に私が感じた嫌悪感を表記していらして、
同じ感覚(失礼 m(_ _)m)
の方がいて嬉しかったです。

 父が兵器の一部の曲線が美しいと興奮気味で言うが、眞人は同意を表してはいたが、無表情だった。
夏子も母の妹という所やその結婚の意味、、
ここのくだりに触れていたのもHKさんだけでした!

 宮崎監督っていつもさらっと嫌な事しますよね_:(´ཀ`」
「アサリ」を食べた時にジャリっと砂を噛んだ時のような、おおごとではないけど確実にイヤな感じ。。
ここに引っかかってレビューしてくれた方がいて、私も!と思いました。

そして仰られている「功」と「罪」の部分。一生懸命考えながら拝読しました。
ちょっと凄すぎてフリーズしました。。
HKさんの仰っている事を心に持って、再度鑑賞してきます!
ありがとうございました!

ゆき