「あの頃、好きだった女性を、今見ない方が良いと言われているような作品だった。」君たちはどう生きるか ISSIさんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃、好きだった女性を、今見ない方が良いと言われているような作品だった。
「君たちはどう生きるか」を見てきた。
学生時代、ナウシカのロードショーの初日に見に行った。当時はアニメは子供の見るものだったので、午前中と言うこともあり大人は僕一人だった。ガリバー状態と言うか、巨神兵状態だった。
そして今日、上記の映画をロードショー初日に見に行った。
あの頃、好きだった女性を、今見ない方が良いと言われているような作品だった。
例えるなら、黒澤明の「夢」のような、
井上陽水のUNITED COVER2のような、
スターウォーズepi1のような、
あなたの青春は終わったんだよ!と告げられているような作品だった。
そうだよ、僕も歳を取ったんだよ。永遠の巨人なんかは存在しないんだよ。黒澤明と同年代の人は同じ感情を味わったのだろう。
彼も、老いる普通の人だったんだ。
僕はこの事実を受け止めるにはもう少し時間がいる。
あれは、宮崎駿さんの作品だと思います。
僕が思うに、我々凡人は、まず、描きたいメインのストーリーがあって、それに付随した小さなエピソードが生まれて、それに合わせたキャラができる。と思いがちである。でも実際は、逆である。訳が分からないが面白いキャラが浮かんで、小さなエピソードが生まれて、それが、組み合わされて、全体を貫くメインのストーリーが生まれるのである。その辻褄合わせの為に、数限りないフィードバック、潰しては、組み立てる作業が続いて、一点の光明が見えるのである。120%の力を使って、初めて矛盾のないストーリーが生まれるのである。ナウシカが、風立ちぬが、生まれるのである。
いわば、今作は、途中なのである。80%ぐらいなのである。そこからが、常人離れした死ぬようなブレインストーミングの末に、似ても似つかぬ名作になるのである。その体力が氏にはもうないのである。残念ながら、そして、このままだと駄作になると言う客観的判断もできなくなっているのである。カリスマ性から誰もお蔵に出来ないのである。
あれは宮崎駿の作品ではない、と思いませんか。世界観、人物背景、あらすじ、はおそらく宮崎駿が作ったんだと思います。そういう意味では宮崎駿作品でしょう。でも、その先の作業をおそらく吾朗に渡したんでしょう。まとまりの無い行動、表情の死んだ人物、ゲド戦記の頃と全く変わってない。意味の無い自傷と意味の無い父親殺しがかさなります。宮崎駿の設定を読み取れないんだからまともな作品になるわけが無い。
と思いました。