「宮崎監督の本音と遺言」君たちはどう生きるか 37852さんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎監督の本音と遺言
大叔父は宮崎監督。
石の世界は宮崎監督の創作世界そのもの。
その世界は悪意ある墓石の積み木の塔である。
つまり金と欲にまみれていると監督は自認している。
しかし後悔してるわけではない。
眞人に渡す13個の悪意なき積み木は彼のこれまでの作品数。
監督は、純粋な人間になら跡を任せてもいいと思っているが、眞人ですら悪意の証を持っているわけで、つまり監督の跡を継げる人間なんていない。
だから自分の代で世界が終わるのを受け入れている。
これを裏切りだと非難するインコ大王とは鈴木敏夫プロデューサー。
鈴木Pはこの世界をなんとしても存続させたい。
しかし私利私欲だけではなくスタジオジブリ王国ならぬインコ王国のため。
結果、鈴木Pことインコ大王は自分で積み木の塔を積みなおすが見事に失敗し塔は崩れる。
それはスタジオジブリ王国の終焉であり宮崎監督の世界の崩壊。
石の世界は消え去り、眞人は現実を生きていく。
石の世界の記憶は現実では維持出来ないので最終的には忘れる。
タイトルである「君たちはどう生きるか」というのは宮崎監督=僕に対しての意味。
僕(宮崎監督)はファンタジーに生きた。
しかし君たちは僕のことはそのうち忘れていいから現実を生きなさい。
つまりファンへの遺言でした。
この作品が宮崎駿自信による自分の作り出してきた世界の批判、というのは同意見です。その上で、インコが「ジブリで働かされている人たちの非人格的な姿の象徴」と考えると、世界が崩壊したあとそれが普通の小さいインコに戻り、それを見たなつこさんが「かわいい」といったところが涙腺崩壊ポイントでした。
「遺言を宣伝する」という発想はありえないですから、宣伝なし、事前情報なしという手法も、もっともな事だと思いました。「辞世の句」「swan song」と、言葉としてはどっちが近いだろうか?