「とりあえず、君たちはどう生きるかを読もうと思った」君たちはどう生きるか スライムさんの映画レビュー(感想・評価)
とりあえず、君たちはどう生きるかを読もうと思った
あの世とこの世を繋ぐ謎の建物みたいな石に魅入られた大叔父が、石を伝ってあの世に留まり、争いばかりで嫌気がするこの世から離れ、自分の理想の世界を作っていた。そこに迷い込んできた娘や手伝いの女性、そして呼んできたインコやペリカンなどと一緒に暮らしていたが、やがてその世界の均衡も保てなくなっていた頃に、真人が紛れ込んできた…
という解釈をしたんだけど多分違うと思う
この映画がなにを伝えようとしてるのか、分析しながら序盤は見ていた。
突然の母の死とそれに伴う新たな生活(田舎の屋敷での生活・新しい母親、夏子など)を受け入れられない真人の気持ちがOPのお話で、そこから謎のアオサギとの出会いをキッカケに、つまらない生活から抜け出すかのようにアオサギを仕留めることに熱意を向け始める。そんな矢先に夏子が森に行ったきり姿を消し、夏子の後を追って、森の中の建物に入り、そうしてあの世へ…という展開だったはず
あの世での冒険や交流を通して、夏子を母として受け入れたり、母の死を乗り越えることを経験するのかと思ったが、そんな描写は無かったように思う。(あったけど分かりにくかった…?)
おそらく「あの世」の設定や、登場人物たちの繋がりは非常に練られていてきっと面白い物なのだろうが、それがあんまり見てて感じられなかった…なんならOPの火事のシーンが1番好き
というか結末、世界を犠牲にして自分の家族と家に帰ることを選ぶっていうのは、なんかもしかして新海誠っぽい?というか、最近の流行りに当てられて、宮崎駿は今回の主人公像を作ったのかなとも思った
でもだとしたらそれはちょっと物語に馴染んでないというか、来てまだちょっとしかたってない(劇中時間では数日経過しているかもしれないが、観客はその時間の流れも把握しづらかった)ような世界の命運をいきなり託されても(しかも積み木で)、知らんわ母さん連れて帰るわってなるし、そもそも表情が乏しい主人公だから尚更葛藤とか伝わりにくい。
分かり易さ、分かりにくさは作品の善し悪しを決める分けではないが、この映画は分かりにくいというより、とっちらかってしまったという感覚の方が近い。それは観客に「 伝えたいこと」を伝えられるかられないか以前の問題である
面白くなかったとかって言いたくないんだけど、こうやって噛み砕いて文字にしてしまうとやっぱり私は、この映画を面白くないと感じているんだなと理解出来て辛い。
いや、面白くなかったわけではないのかもしれないが、終盤の展開やラストシーンなどは「それで終わり?」って思ってしまったし、そこでこの作品の自分の中での評価が大方決まってしまったような気がする
ただ最後の米津玄師、米津玄師はマジで天才だと思った。「地球儀」というタイトルピッタリすぎるし歌詞も編曲もメロディも最高すぎる
ちゃんと映画の主題歌だった。普通に米津玄師の主題歌だけで泣きそうになったというか、米津玄師の主題歌でこの映画のこれまでが全て浄化・昇華されたまである
現実世界とは違う世界に迷い込んだ少年が、その世界をぶっ壊して現実世界に戻るまでの話、という情報だけが残る映画だった。
追記
他の人もみんな言っているが、そもそもこの映画は「宣伝はしない」と見越して作られていたわけではないので、宣伝をしないことによって期待されていたサプライズなど、とにかくハードルが上がっていたのは否めない。
ただ実際、全く事前情報なしで見たこの映画の冒頭のワクワク感は凄まじかったので、そういう映画の見方はアリだと思うが、宣伝しないなら宣伝しないことを見越した?作品作りが必要なのかなとか思った
音楽も含めこの映画はかなり静謐というか、地味という人もいるだろうというような雰囲気だった。それは全く悪いことでは無く、むしろこの雰囲気やテンション感で物語が進んでいくことへの心地良さを感じることができるはずだった。だが肝心の物語の部分がごちゃごちゃなので、よく分からず退屈だというように感じてしまう人もいるだろうと思った。
でもこれらは全てシナリオとか物語に対する感想であって、やっぱりアニメーションとしてはめちゃめちゃ、というか過去1番レベルの最高の物を見せてもらえたと思う。冒頭の走るシーン、ワラワラが飛んでいくシーン、などなど…
アニメを見る時、アニメーション技術とシナリオを切り離して評価するのではなく、1本の作品としてどれだけ観て感じることが出来るかが大切なのかもしれない
でもそうか、巨匠だからと言ってなんでもやってとっちらかった映画作られてもそれを良いとは言えんって思ってたけど、
絵描きとして、アニメーターとして天才的なセンスを持つ宮崎駿のそれ自体が作品であり素晴らしい表現の1つとなんだと思えば、それを浴びるように感じられた体験は良いことなのかもしれない。どんなに投げやりなラストシーンでも問題ないのかもしれない
あーまた風立ちぬのときみたいに、周りが分かってる風な態度とるから自分の視力が低いんじゃないかと思って、頑張って高評価しちゃってる。やっぱりあの終わり方は納得できない……。これまでの宮崎駿の作品や人生の蓄積があるから感動するっていうのは、長く続けてきた人、長く続けてきたシリーズが使える狡い武器だと思ってしまう。それで良いのかもしれないけど、それだけでは良くないと思う。
思う通りの評価を正直に書けばいいと思います。
自分のえびボクサー星三つは誰がなんと言おうと撤回しません。
面倒な事書かれたら、コメント欄閉じちゃえばいいんですよ。