「汚れちまった悲しみに…」依存魔 shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
汚れちまった悲しみに…
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素晴らしい作品だ。性に芽生え、肉欲を知る前の少年と少女の純粋無垢な愛の物語。男女の性愛を未だ知らず、純然たる愛に満たされた二人。見事に浄化された愛の形である。少女は精神を病み、パニックに見舞われると凶暴になり、見境なく周りの者を傷付ける。少年は母子家庭であり、鳥だけが友達の孤独の世界に閉じ込められいる。互いの不安定な精神状態が二人を惹きつけ、究極に至る純愛を知ることになる。この監督特有の一筋縄ではいかない美しいストーリーに、映像の美しさが相俟って、自分の中で埋もれてしまった無垢なる精神を思い出させてくれた。少年少女期の夏の日々は意味を必要としない無意識の勝利による喜びに溢れ返っていたのだ。その時を切り取った稀有な映像に誰もが感動を覚えるだろう。エンディングのクロヅルの群れが大空を横切る様は、この時が永遠に続くような予感を与える。実際は一瞬であっても、その一瞬に永遠なる連続性が投影されている。これほど美しく混じり気の無い愛の作品を見せつけられると、馬齢を重ねた今となっては、表題に引用した中原中也の詩が眩しく思える。
余談だが、この邦題は何とかならないものだろうか?内容を低俗に落とし込めるのが楽しいのだろうか?オリジナルの題名(監督が意図したタイトルの翻訳は「崇拝」)からかけ離れ過ぎているばかりか、いささか悪意があるようにも思える。
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