「しん次元、これは何かが違う」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 callさんの映画レビュー(感想・評価)
しん次元、これは何かが違う
まず3DCGはよくも悪くもなかった。あえてこの映像を見せるならその理由となる何かが欲しい。
例えば、無声映画からトーキー映画に変わったなら俳優に雄弁に喋らせてBGMをかきならす、白黒映画からカラー映画に変わった時は派手な色の何かを出してくる。ウリを生かした何かが欲しい。
ではこの3DCG化したクレヨンしんちゃんはどのような効果があったのか。
強いて言うならあいつのキモさが強く出てきただけで、それは映画とどう関係があったのか……。
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敵役について。
「悪役にも悲しい過去があったんやで」というのを押し出すつもりなら、この悪役は徹頭徹尾に明らかに悲しい状態です。
社会的に悲惨な状態にあった悪役が しんちゃん達にボコられてさらに悪い方向にふっとんでいるだけです。
ラストにもうちょっと工夫を。例えばヌスちゃんの施設にいる人たちのリーダーになるとか、そういう何かがあればもうちょっと変わったかもしれない。
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タイトルの「何かが違う」は、悪い意味です。
少なくともこれまでのクレヨンしんちゃんに望んでいたような何かが見たかった。
今回は話がかみ砕けないままに おなかの中で見ている過去世界の重い鬱に引っ張られて爽快感がなかった、しかも長すぎた。
例えば、眠るたびに過去世界の夢を見て、それが実は……みたいな鬱画面を小出しする展開にするとか。何もできないけどいじめっこ三人組をこらしめる(もう普通に強盗で告訴するとかでいいんじゃね?)とか。そういう話なら爽快で終わったかもしれないのに。
無敵の人が社会的に問題を起こしたとしても、
その無敵の人にもそれをやるだけの理由があったんでごわす……、ってメッセージになっている気がする。
これまでの映画のように しんちゃんの言葉にはっとするような形式でならともかく、今回のようなこんなストレートに説教くさいクレヨンしんちゃん映画を見たかったわけではない。
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いいところ
・吉永せんせい、がんばった。
・弱者男性のひねくれかたが凄まじくリアル。それだけに改心コースまでの道が甘すぎる。
・カスカベ防衛隊のみんな、時間が短いながらも個性がでててよい。
・地下施設。あれだけすごい設備ならきっとすごいことをしてくれるという期待感があった。期待感だけはよかった。
・怪獣のキモさがすごくよい。子供向けではないが大人向けとしてあの造形はすごく良い。
・空気階段のふたり、声優としてすごくよい。
・サンボマスター。感無量。なにあの歌詞、あの声。心に響きまくる。良い。
・次回は3Dやめると決めたところ。よく決断してくれた。