「クレしんの寿命は時代的に尽きつつあるのかも」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 ぽんすけさんの映画レビュー(感想・評価)
クレしんの寿命は時代的に尽きつつあるのかも
「説教くさいしんちゃんは、あんまり観たくなかった」「しんちゃんは、時代に合わなくなったんだな」というのが感想。
原恵一監督時代のクレヨンしんちゃんが、DNAに埋め込まれるくらい好きで観てきたものの、ここ10年くらいはあまり追ってなかったので、かなり久しぶりに映画館で観た。
初の3DCGということで、気合は入っていたと思う。メインキャラの非理谷充が30歳と私と同い年で、ターゲットにする年齢層もそこに当てていた気もする(そのわりに小ネタはもうちょい上世代のネタが多かった?)
おそらく過去作オマージュも多かった。思いつくだけでも、
・日本の未来に絶望する大人vsしんちゃん=オトナ帝国
・ひろしの足の臭さがキーアイテム=オトナ帝国
・精神世界でのしんのすけとの邂逅による敵キャラの改心=ブタのヒズメ
・野原家への突然の秘密組織による訪問=ブタのヒズメ(これは定番か)
・お尻にフューチャーしたしんちゃんのアクション=嵐を呼ぶジャングル
・ご馳走で食卓を囲むのが幸せ=焼肉ロード
他にもありそう。
あと、同じ3DCGアニメ『STAMD BY ME ドラえもん』でもお馴染み、「帰ってきたドラえもん」みたいなシーンも。
全体に要素が悪いわけではなさそうなのに、なんだか釈然としないまま映画が終わってしまったのは、全体にきゃらと脚本の噛み合わせが悪く、リアリティとしんちゃん世界のバランスも悪く、風刺のセンスが全然なかったせいかと。
ざっくりファンとして不満だったのは、
・3DCGがチャチで、キャラクターが表情に乏しい
・舞台設定として、新橋とか渋谷とかリアル世界にしたいのか、終盤みたいにファンタジーにしたいのか、よくわからず、入り込みにくい
・けっこう同じことを感じた方も多いようだが、ひろしのラストが説教くさいし、作品のメッセージとしても「は?」という感じ
・敵キャラ、非理谷充がデフォルメされつつも妙に生々しいインセルで、しんちゃん世界の敵キャラにはだいたいあるチャーミングさがない
・しんちゃんには、暴力に暴力で解決しようとしてほしくない。いじめに正面から立ち向かうような昭和くささは、しんのすけのハードボイルドな魅力に合わない
まあ、ファンがジャンルを殺すというように、しんちゃんへの思い入れが妙にあるからかもしれない。
ただ、強く感じたのは、クレしん映画における最大のメッセージ「平凡な家庭生活が、実は最高の幸せ」が、もう時代的に合わなくなってしまったのだな、ということ。もはや結婚も子のいる家庭も自明ではないし、希望する若者にとっても遠い理想になりつつある。
非理谷とそう歳も変わらないひろしの言葉が、単なる高所からの説教にしか聞こえなかったのは、その時代の移ろいの証左かと。これは本作の出来に関わらず、残念なことだが、もうクレしんという作品自体の寿命が尽きつつあるのかもしれない。