「アイドルオタク目線では許せない映画」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
アイドルオタク目線では許せない映画
アイドルオタクをかじってた人間としては、面白い面白くないはいったん置いておいて許せないという感情になる、稀有な映画体験だった。
物語の本質には触れず外側の部分だけで不満だったことをまとめてみる。
限界孤独独身男性が推しのアイドルが別の男性と結婚したという知らせを聴いて憤慨し、そこから超能力に目覚め妬み嫉みから暴れ回るっていうざっくりあらすじ。
アイドルを応援する際に求めるものって人それぞれで、「疑似恋愛の対象」という人もいれば「元気をくれる存在」という人もいる。いわゆる地下アイドルのようなファンとの距離の近さをうりにしてるようなアイドルを応援すると「無条件の肯定」や「自分の存在を認めてくれる場所」を求める場合もある。
じゃあこの男性は何を求めていたのか。結婚したことを怒っているので、「疑似恋愛の対象」なのかなと思いきや、この男性はそのアイドルとご飯にも行き家まで送ったという設定で。これはいらない設定だったんじゃないかな。そうしないと、”アイドル“から裏切られた喪失感が劣ってしまうし、自分自身も良くない行動に加担しているという感情と裏切られたという感情があまりにも相反するため、見る側からすると「そんな意識のアイドルを推してるあんたも…」と同情の余地がない。
アイドル=恋愛禁止論者であろうが、そうでなかろうがノイズになる設定だったと思う。
映画の後半で、その男の半生が描かれる。両親は離婚し、友達もいなくて…ざっくり言うとそんな感じで。そんな男のこれまでを「今までは頑張ってなかった」「未来は自分の力で頑張って変えてゆけ」的なメッセージをしんのすけや野原一家にぶつけられるんだけど、これがまた厳しい。自分の居場所を求めるために現場で推し活をすることを決めた彼の過去は逃げだったの?一生懸命応援してきた(繋がりは良くないけど)この期間は頑張ってないの?アイドルを応援している冴えない男というレッテルのようなものを感じてきつかった。しんのすけに「裏切られて悔しかったかもしれないけど、応援してきたのは勝ちがあるゾ!」みたいなこと言わせないとダメでしょと思ってしまいました。
アイドルオタクをやってたからこそ引っかかってしまったけど、冴えない男に変われ!というのは大根仁の作家性に通じると思うので(モテキなんて露骨)、一貫してる分信頼できる作家だと思う。
ただ、大人側が言ってることも今回は問題おおあるなあと思った。暴力してくる側が悪いのは前提として、暴力でやり返す様に「頑張れ!負けるな!」と叫ぶ野原一家。最終的には悪臭という変化球を使うけど、なんかこれ良くなくない?奇しくも「STAND BY ME ドラえもん」でも同じこと思ったような…
3DCGも効果的な場面はちゃんとあるんだけど、スピード感はなくなるよね。走ってる場面が歩いているように見える。
エンドロールがバクマン形式でこれも大根仁だなって感じ。サンボマスターのとある歌詞のリフレインが良かった。完全にこの映画が救われた。
笑えるシーンは笑えるし、周りの子どもも感動して泣いてたけど、Not For Meだったということで。