「津軽の言葉の温かさも垣間見える」658km、陽子の旅 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
津軽の言葉の温かさも垣間見える
高速道路のサービスエリアで置き去りにされてしまってからは、果敢にヒッチハイクでクルマを乗り継いで、郷里・青森を目指すー。
すっかり引きこもりの様子だった陽子にも(余儀なくされたこととはいえ)そこそこの「生活力」は、まだ残っていたようです。
そもそもが、クルマでの移動だったので、旅装も「着の身着のまま」のような最低限の軽装、所持金も限られているという身の上でも。
気さくに乗せてくれる人もいる反面、女性一人でのヒッチハイクということで、さもありなんというトラブルにも巻き込まれてしまったりもします。
いろいろ気さくに話しかけて来るドライバーには、あまり自分を語らなかった陽子でしたけれども。
反対に、お礼を言っても津軽の言葉で「なんもだ。」としか返さないドライバーには、問わず語りに身の上を話す陽子も、やはり、もともとは朴訥だが温かい人柄の津軽人だったようで、そんなことも、本作からは垣間見えるようでもありました。
陽子が暮らすアパートは薄暗かったり、陽子が降ろされてしまったパーキングエリアではやがて夜を迎えてしまったり、漸く着くことのできた青森も小雪模様の曇天だったり…。
ヒロインの名前が「陽子」とはいいつつ、本作には、陽光あふれるような明るげなシーンは、ほとんど見受けられないのですけれども。
そして、そこに浮世での陽子の「生き辛さ」が透けて見えるようにも思われるのですけれども。
しかし、観終わって、じんわりとした「温かさ」を感じることができるのは、目的地が近づくにつれて増えてきた、温かな人柄の人たちのその「温かさ」に負うところが大きいのだろうとも思います。
別作品『海炭市叙景』でも、地域経済の崩壊に翻弄される市井の人々の生きざまを見事に活写した熊切監督
らしく、本作でも、能弁というり、どちらかというと朴訥(ぼくとつ)な温もりのある方が多いと思われる津軽の人柄を、菊地凛子の好演で見事に切り取ってみせた一本でもあったと思います。
それやこれやで、佳作としての評価が少しも惜しくない一本だったとも思います。評論子は。
共感ありがとうございます。
寒そう、主人公イタイ、居心地悪そうというイメージでしたが、オダギリ父さんはちょっとほっこりした印象が残ってます。
ところがゼンブオブトーキョーでは!観ているこっちが居たたまれない感じになってました。