ワース 命の値段のレビュー・感想・評価
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身動きの取れぬ誠実な人
Worth
実話に沿ったストーリーのため突飛な解決法は無い。慎重な描き方にならざるを得ないが、何事もそうだが全体へのプレゼンだけではなく個別化した対応が最後に救いになるのだ。そのことが最終的に集団としての動きも生み出していく。
主人公率いる事務所は無償で嫌われ役を引き受けながらも最後まで仕事を行う、悲しみの立場の思いと汲むしかないこと、戦時中の国としての機能の維持、欠落していく人々の行き先、当時に起こったであろう様々な現実が想起される。
正義感を試す映画
お金ではない何かを探しあぐね、辿り着いた結論は?
我が国於いても、「命の値段」の算定は日々行われており、
裁判であれば、損害賠償金として示されるし、
保険でもそれは同様。
もっとも金額は法律で規定されているわけではなく、
年齢や年収等を勘案し都度算定され、
保険会社等であれば、独自の算出式は当然持っているのだろう。
とは言え、短い期間で、七千人もの犠牲者とその遺族に
補償金を分配するのは極めて稀ではないか、
ましてやそれが「9.11」によりもたらされたなら、
猶更の困難が伴うのは容易に想定でき。
もっとも、この基金が創設された経緯は相当に胡散臭い。
訴訟に持ち込まれれば長年に渡って経済活動が停滞し、
その影響は広大になると危惧する
国家と企業の妥協と打算の産物。
期限を短く区切る理由もまさにそこにあり、
誰も遺族のことなど考えてはおらず、
要は体の良い外向きのパフォーマンス。
一方、その大事業を、
あろうことか無償で引き受けた『ケネス・ファインバーグ(マイケル・キートン)』には
彼なりの矜持が。
企業を相手に裁判を起こしても、何時結審するかも不確実な上に
必ず勝てる保証は無し。
で、あれば、この制度を利用した方がよりメリットがあるだろうとの
一種の親切心。
「命の値段」を算出する式を創り、各人の状況を当て嵌め、
ビシビシと提示する。その利点を大いに強調しながら。
にもかかわらず、目標とする八割の合意には遠く及ばず、
殆どの対象者から喰らう総スカン。
その背景には何が有るのか、と
果たして主人公は目標を達成できるのか、の
二つが見所のわけだが・・・・。
一般的に算定される「命の値段」には(先に挙げたように)軽重があり、
とは言え
テロに巻き込まれて亡くなった親族からすれば
納得できぬのは心情的にも理解。
勇敢に闘った消防士だから、
証券会社に勤め年収が高いのだから、等の
思惑はある上に、他者へのやっかみも当然存在。
あまつさえ、八つ当たりする人間も出て来る始末で
『ケネス』も彼のスタッフも次第に追い詰められる。
しかし答えは、ある意味、判り易い所に。
要は、人と人との繋がりは、どこから始まるのか、との
原理原則。
提示される数式と金額ではなく、
言葉による対話と、
相手の立場に立ったカスタマイズが
事態を解決に導いて行く。
私欲は無いとは言え、
学者肌でビジネスライクな『ケネス』が
次第に変化する経緯は感動的。
そのカギとして用いられる、
犠牲者の家族の心情の吐露は
当然のように涙を誘い、
これで心を動かされない人間は
果たして居るのだろうかとの思いを強く持つ。
マイケルキートンがいい!
2001年の同時多発テロの補償金の交渉を政府から
まかされた男の実話。計算高い面と意見を聞くことにより、皆の味方をする人間ドラマ。マイケルキートンが
頭を薄くしていい味だしてました。
逆にスタンリーが毛がありましたね。
【"テロに斃れた方々には補償金と共に敬意も必要。人間の命に値段の差を付ける事は道義的に許されるのか。"と言う重いテーマを扱いつつ、当時の補償基金プログラムに関わった弁護士達に敬意を感じた作品である。】
- 一人一人の命の値段は道義的に許されるのか?と思いながら鑑賞した作品である。-
◆感想
・アメリカ政府が、9.11後に即座に被害者と遺族を救済する為に設立した補償基金プログラム。だが、それは遺族から多数の訴訟を阻止する為でもあった。
- 保険会社の倒産など、経済破綻を回避する為であるが・・-
・弁護士のケン・ファインバーグは特別管理人に指名され、短期で合意に持ち込むように、政府から指示される。
・ファインバーグの計算式- 主に、犠牲者の給与がベースになっている。-の過ちを指摘する妻をテロで失くした聡明な男、ウルフ(スタンリー・トゥッチ)が指摘した事。
それは、テロの犠牲者達の過去の生き方を見ずに、机上で計算式を叩く事は過ちであるという至極、真っ当な主張であった。
ー ウルフの考えに賛同し、多くの遺族は合意を拒む。だが、ウルフはファインバーグと敵対しているのではなく、政府の施策は否定しているが、ファインバーグを否定しているわけではない。そして、ワインバーグは初めて、遺族と向かい会う覚悟を決めるのである。-
・中々、遺族達の補償金の合意が取れない中、ファインバーグ達弁護士団は遺族一人一人と面着で会い、机上では分からなかった遺族の言葉を時間をかけて聞いて行く。そんな彼の変化を見たウルフは、自らのホームページで遺族たちに合意を呼び掛けるのである。
- "人間"が見えていなかったファインバーグの変化をマイケル・キートンが見事に演じている。-
・それにしても、補償基金プログラムに関わった当時のファインバーグ氏を始めとした弁護士たちの働きには敬意を覚えた。
あんなに精神的にキツイ仕事は、中々無いであろう。
<今作品は"人間の命に値段の差を付ける事は道義的に許されるのか・・。"と言う重いテーマを扱いつつ、テロに斃れた人たちの尊厳、払われるべき敬意を描いた作品である。>
被害者遺族の話は胸を打つが
2023年劇場鑑賞44-本目。
9.11の犠牲者家族が国や航空会社を起訴すると裁判が面倒くさいので、先に国からお金を出すから裁判やめてねという話。
あんなのテロリストが100%悪いに決まってるのに、防げなかったのが悪いと金を要求するのが当たり前な国アメリカ。
金持ちも貧乏人も命の価値は一緒だろと言うところまではかっこいいけど責任はテロリストより国や航空会社なんですね。
こんな大変な仕事をボランティアでやるなんて売名行為とかなんにも考えずに言うバカにはお前やってみろと言いたくなるし、被害者遺族の恐らく本当の声を伝えてくれたところは本当に良かったのですが、流れとしては特にサプライズはなく、映画として面白いかと言われるとうーん、という感じでした。
命の値段
前に進む為
9.11被害者補償基金の管理官となった弁護士の話。
個人への補償は勿論、訴訟により企業が破綻することを防ぐためにと基金が立ち上がり巻き起こるストーリー…なんだけど、どんな計算式だったのか解らないし、どう変わったのかも解らず。
それをみせるものじゃないってことなんだろうけど。
アメリカ人はもっとドライで理論的で個人主義な人が多いと思っていたんですがそうでもないんですね。
結局は理解してもらいたい、心情に寄り添って貰いたい、とカウンセリング的なものが求められていたっていうことで、それって基金とは別の話しとして必要なものだったんでは?と少々困惑、というか解せず。「それはそれ」じゃないんですか?拗れたのは管理官のファインバーグの心持ちと彼のトークスキルの問題ってことですか?
何をみせたかったのか良く解らないし、何だか拍子抜けなお話しだった。
命に値段など付けられない。当たり前である。世の中に公平など無い。当たり前である。全ての人を満足させるなど無理である。当たり前である。そのこの世の当たり前を淡々と描いているところに心を打たれた。
①ラストクレジットの最後で、この映画が作られたのが2020年であるのに今年になって公開されたのかが気になったが…
②ケンが立てた目標が達成されることは初めから予測できる。だってそれだから映画にしたんでしょ。なかなか伸びなかった申請数が最後どんでん返し的に急増するのも本当にそうだったのか分からないけれど脚本としてはそうするだろうね。だから初めから予定調和的な話で予定調和的な映画になっている。
③命の値段など付けられないけれども、私達も普通に生命保険という“命をお金に変える”ものでリスクヘッジしているし。
④バイアスが掛かるのがイヤだから、映画はなるべく前知識がないままで観るようにしている。だから、その時に自分が持っている知識・感受性の範囲内で判断したり感じたりすることになるから自分の知識の無さや感受性の低さや世間の狭さにに気づかされることがままある。(ごくたまに俺ってスゴいかも、って自己満足に陥ることもあります。)
⑤だから、9.11を扱った映画という点でもう胸が一杯になった。
9.11は私にとって結構衝撃的な出来事であった(ある意味東日本大震災よりも。誤解を恐れずに言うと地震とは自然災害であり地震列島に住む我々日本人としてはいつ来てもおかしくないもの。日本人は覚悟を持ってすんでいる筈だけどもね。大惨事には違いないけれども、昔から地震と共生していた日本では先人の知恵にもっと学ばないと)
しかし、9.11は違う。国際政治の歪みが生んだ人工的なテロリズムであり、ある意味その後の世界を変えてしまった。
“真珠湾攻撃の死者は2,400人だか、あれは軍人が主な犠牲者だったが、今回は民間人云々…”ということがそうだが、台詞があり、アメリカ人にとって真珠湾攻撃はまだ生々しい記憶なんだ、ということにも驚かせれたが…
今となってはトンでもない嘘っぱちだったと分かっているが、当時の(アホ)ブッシュ大統領の空しい「イラクには大量の破壊兵器がある」というアナウンスが背後で流れる。おれによってイラクは勿論中東や世界がどれ程変わってしまったか。
脇道にそれたが、9.11である。即死だったとは思うけれども、ビルに突っ込む飛行機の乗員・乗客は寸前にどんな気持ちだったか。突然オフィスに飛行機が突っ込ん出来た時の私達と同じworkers達の心を過った想いは何だったか。熱さに耐えきれずビルから飛び降りた人の映像もあった。朝家を出たときには、その日に自分の生涯がそんな形で終わるとは夢にも思わなかった人達。
なかなか面白かった。
事件の真相不明でも解決か!?
米国の政府補償計算式を知りたくて今か今かと公表を待っていたが出なかった。
出てきたのは、
被害者救済は公平よりも、
残された者が生きることに前に進むというポジティブ思考だった。
それを忘れていたがために事件解決が停滞したのか?
この思考方法は米国思考なのか?
この補償のためには、
事件の真実は何だったのか?が重要なのに補償問題解決が進んで行く⁈
計算式以前に、
哲学、人間愛、同情道理が必要なのかもしれない。
それにしても、
この基金の設立の速さは何だ?
そしてその補償解決全責任をボランティアで請負う偽善が動く合衆国の凄さは驚嘆する。
そんな難題を主演するには、
彼は鈍過ぎる役者だった。
マイケル・キートン主演で、
アメリカ同時多発テロ被害者の補償金分配を束ねた弁護士の実話を映画化した社会派ドラマ。
9.11の遺族補償という難題
思ったより良くない。そういう意味でワース(worse、≠worth)です
9.11テロ被害者救済基金の運営責任者に関するお話です。残念な点が2点
被害者救済を名目にしている基金ですが、真の目的は航空産業を救済することというのが最初に説明されます。
そういう背景がある以上、主人公が取り組む被害者の基金への申請目標80%なんてものに意味は無いです。
意味のない目標に向かって頑張ってもなあ・・
これが1点目
被害者を補償金額に置き換えることを信条とする冷酷な主人公が心優しい人間に変身するのですがどうも描き方が足りないような。これまでもいろんな経験しているはずなのに今回あっさり宗旨替えするんだねと・・
これが2点目
予告編みて勝手に期待していただけなんでしょうが、思ったほど良くない。
worth(wərθ)のθは発音しにくくてwərs(worse)になっちゃいがちですが、ちょうどピッタリな感じです。
やや字幕が不親切な点もあるが、基本的には高評価。人権問題などに興味がある方はぜひ。
今年60本目(合計712本目/今月(2023年2月度)26本目)。
実話に基づくストーリーで、あの有名な9.11テロでの犠牲者に対する遺族救済の補償基金プログラムのお話で、固有名詞等名誉に関する一部は変えてあるのだと思いますが、大半は史実であるはずです(最初に出る通り)。
日本では同じような事件が起きたことが少なく(なお、第二次世界大戦「それ自体」に関する国民の苦しみは、「事柄の性質上、全員が等しく甘受すべき、というのが最高裁判例)、あえて日本で「趣旨は少し違うが同趣旨」のものを探すとすれば、サリン事件や、広島・長崎の原爆救済問題等があげられるかな、と思います。
ただ、日本と違い「訴訟を起こすのは自由だが、全員から訴訟を起こされると(地方裁判所がパンクする以前に)アメリカ経済が破綻する」という事情があったので(これは確か。ただ、アメリカが一時的に立て替えたものをフセイン等に請求したって無理な話でしかない)、映画内でもあるように「裁判は回避、なんとか全員が納得する合理的な救済プログラムはないか?」ということで「命の計算」をする弁護士のお話です。
ややストーリー的にこのような事情があるため、民事訴訟法、国家賠償法(日本基準)の知識が必要なところがありますが、最低限です。
採点は下記を考慮して4.7→4.5に切り下げをしています。
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(減点0.3/「パブリックコメント」の意味がわかりにくい)
・ 実は日本の「行政手続法」は、アメリカやドイツのそれをまねたものです。審査基準や処分基準、法律に基づく命令を制定するとき、「このようなものを作ろうと思っていますが、意見のあるかたは●月●日までにメールをください」などとあります(日本では行政手続法の中で、パブリックコメントは「できるだけ電子的な方法を使う」というルールになっています)。
上記が適用されるのは「国に」関係することだけですので、条例その他、国の関与が及ばない地方自治体も、上記のパブリックコメントの考え方を取り入れた「(都道府県名)行政手続条例」を制定して実質同趣旨のものを制定しているところが大半です。
もともとアメリカ由来のこの制度は、「国民の中にも、中にはすぐれた意見を出す人もいるし、一度は国民の前に出してチェックしてもらう」という透明性を狙って作ったものです。
この話は2回出ますが、どちらにも説明はなし…。アメリカの場合「アメリカ連邦行政手続法」、日本では単に「行政手続法」(都道府県では、同条例)がこれを定めています。映画内の字幕で出る2か所はこの2つです。
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(参考:受け取る保険金からの控除の話)
・ 今回は「被害者救済プログラム」の話ですが、不法行為(究極論はここに行きつく)の損害賠償額から、個人が受け取った生命保険金を控除すべきではない、というのが日本の判例の立場(昭和39.9.25)です。
※ 保険金は、「いざというときのためにお金を出して何かあったらもらうもの」であるので、そこからの控除を認めると「保険に入らないほうが得」という変な結論になるため。
実話の重み。政治的背景への突っ込みは弱いけど、様々な事例や出来事...
実話の重み。政治的背景への突っ込みは弱いけど、様々な事例や出来事の細部は面白い。カレンの例は、兄の問題もあって考えさせられるところが多かった。死んだ人への思いは複雑な構造を伴う。主人公のキャラはよかった。
単調過ぎた。
予告で見て
めちゃくちゃ面白そうなテーマだなと思ったのに
何故……
ものすごく淡々と進む。
その割には
ケンが被害者遺族へ寄り添い出すのが急だったり
うーん
興味深かった話なのに残念。
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