「観たかったのとはちょっと違うが、これも悪くない」青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
観たかったのとはちょっと違うが、これも悪くない
原作の「青春ブタ野郎」シリーズは未読ですが、テレビアニメですっかりファンになり、劇場版「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」で大きな感動を味わい、本作も期待して公開日に鑑賞してきました。率直に言って、期待を超える作品ではありませんでしたが、これはこれで悪くなかったです。
ストーリーは、兄・咲太と同じ峰ヶ原高校への進学を希望する梓川花楓が、咲太やその恋人・桜島麻衣、麻衣の妹・豊浜のどからの協力を得て受験勉強に励む裏で、不登校を経験している花楓の身を案じて通信制高校の情報集めをしていた咲太は、やがて花楓が峰ヶ原高校にこだわる理由と内に秘めた悩みに気づいていくというもの。
本作では思春期症候群がそれほど前面には出てこず、もっぱら花楓の高校受験をメインストーリーとして展開していきます。双葉や古賀の出番が少ないのは寂しいですが、そのぶん、いじめと不登校を経験した花楓が、もう一人の「かえで」の存在との葛藤に苦しみながらも、周囲の支えを得て自分を取り戻していく姿が丁寧に描かれています。誰かのためではなく、自分のために自分の手で進路を決めた花楓は、とても大きな一歩を踏み出したのだと思います。そんな花楓のこれからの高校生活に心からのエールを送りたいです。
一方で、メインヒロインの麻衣の出番もしっかり確保しているのはGOODです。咲太と麻衣の掛け合いも健在で、「ああ、青ブタらしいこの感じ、たまらなく心地よい…」と一人で浸ってしまいました。シリーズファンなら、このやりとりを観るだけでも劇場に足を運ぶ価値があると思います。エンディングもあえて新曲を投入せず、「不可思議のカルテ」久保ユリカver.を使用しているのも好印象。最後までしっかり余韻に浸れました。
エンドロール後にはポストクレジットがあり、冒頭の伏線回収は次作に持ち越しということがここでわかります。うーん、本作に直接関係のないシーンを最初と最後に置くのは、少々あざとさを感じますが、原作でもこうなんでしょうか。とはいえ、本作以上に期待させるものがあり、早くも次作の公開が待ち遠しくなります。
キャストは、石川界人くん、瀬戸麻沙美さん、久保ユリカさん、東山奈央さん、種崎敦美さん、内田真礼さん、雨宮天さんら、テレビアニメ同様の布陣で安定感抜群です。
そんなキャストが登壇する舞台挨拶中継付き上映があり、かなりそそられたのですが今回は見送り。なぜなら、料金が割引不可の一律2000円だったから。実際に登壇されるならまだしも、中継でこの料金はどうなんでしょう。たいていの舞台挨拶中継は通常料金なのに、アニメ作品だといつも特別料金です。「アニヲタからならいくらでも搾取できるだろう」というスタンスは気分が悪いです。こんなところで稼ごうとせず、リピーターを呼ぶような作品づくりで勝負してほしいものです。