「がっかりしました。」きみの色 あおさんの映画レビュー(感想・評価)
がっかりしました。
半年前から楽しみにしていた本作品。
端的にいうと全く面白くありませんでした。ここまでお金を払って後悔したのは、過去を振り返っても覚えがありません。
主人公日暮トツ子は人を色で識別する女の子なのですが、まず第一にこの設定がいまいち活きていない気がします。
様々な葛藤や悩みを前にしてそれを色で表現するのかと思いきや、特段何か起こることはなく淡々と物語が進んでいき観ているこちら側は見事な肩透かしを喰らうことになります。ちなみにこの現象は他のキャラクター、ひいては作品全体で行われます。
それでも時には各場面で色が交わり、そこから発展するようなこともあるのですが、私的には誰かとの対話や他の人物が感情を波立たせた瞬間には「こういう色になるんだ」といった内面での発露を視覚的にわかりやすく表現して、もっと色を全面に押し出した内容にすれば良かったと思います。
他二人のバンドメンバーについても色々ありますが、特に作永きみの退学に関しては疑問が浮かぶばかりです。高校生という親の庇護下にありながら(彼女の場合は祖母)独断で学校を辞めるという決断をする、というのは百歩譲ってのみこみましょう。ですが、厳格かつ格式高そうなミッションスクールで、親元に何一つ連絡がいかないというのは如何なものでしょうか? その上辞めた理由がしょぼすぎます。いくらなんでも見切り発車すぎて、若さ故の過ちという一線を超えた向こう側に彼女は立っています。つまり意味がわからないのです。
そしてバンドメンバー唯一の男の子影平ルイに関しても、とってつけたような悩みでそこには物語としての面白みが感じません。
というか演奏シーンの最後の曲、シスター日吉子と主人公の友達以外は初見だった? にも関わらずなぜあんな仲良く踊ってるんです? 腕を組んで楽しそうに踊っていたシスター達も少し前まで、一ヶ月の反省文と奉仕活動させてましたよね?
最後の最後に安っぽいミュージカルを見せられて、これで溜飲が下がると思っていたら大間違いですよ。いつだって、観客は置いてけぼりになってました。
しまいには演奏後にバレエを踊って、不意に「色がわかった」なんて言われてもこちら側は「?」で一杯です。
公開二日目、シアターには三百席も用意されています。
ですが、七人しかいませんでした。選りすぐりの精鋭達です。
その精鋭達が明かりがついた直後、余韻に浸ることもなく皆同じようにして俯き、背中を丸めながら一直線に同じ方向に向かって歩き出しました。
帰りのエレベーターに精鋭の内、私含め三人が同乗していましたが、その内の一人が携帯を見ながらため息を吐いていたのは忘れられません。
それがこの作品の完成度を物語る何よりの証左だと思います。
期待してた分、怒りが満ちてきたのでしょうね。
私はさして期待してなかった分、ただの絵のきれいなだけの映画でした。(それにしても薄っぺらい脚本でしたが・・・)
あおさんの怒りがよく伝ってきました。