「色彩と雰囲気を楽しむビジュアル作品」きみの色 Geso_de_Nyoroさんの映画レビュー(感想・評価)
色彩と雰囲気を楽しむビジュアル作品
PVから監督・山田尚子推しで、パンフにも相当デカい文字で名前が表記されてる事から、今一番推されてる女性アニメ監督なのでしょうか。
本作は『雰囲気アニメ』としてはとても良好なビジュアルです。色彩豊かで画面いっぱいのカラフル且つ柔らかな雰囲気。タイトル通りの『色』表現です。
舞台は長崎、チョッと見かけた景色が出てきて(グラバー通りなど)、色明日や幻影太陽などの聖地と共通してて、観光兼ねての巡礼の楽しみも出来そう。でも佐世保鎮守府がチョッとソレとは解らないのと、離島のアチコチを集約してるので広範囲です。
ムチムチのキャラデザも、一部好き嫌いありそうですが個人的には問題なし。
気になる点は、色彩と雰囲気を全面に押し出した表現に対し、抑揚・メリハリと言った『展開のコントラスト』がフラットな事。山田尚子監督は『心情描写』に定評があるとのことで、本作はあまりその辺の濃度も感じられず、キャラの掘り下げも浅々でした。
聲の形ではあれだけ精神を揺さぶる作話だったのに、リズでは一転おだやかに、本作もそのリズの延長?位で、全体的に大人しい作品でした。
『人が色で見える』と言うネタも単に人を色別するだけの能力で、トツ子とその周辺の人物を関連付ける作用のみ。諸条件で色が変化する様子もなく、その能力が話の軸ではないのが微妙でした。
細かい所では、トツ子がキミに惹かれた切っ掛け(理由)が『色』という感覚だけなのはともかく、ソコをサラッと一目惚れ的に流すだけでは印象薄です。そしてキミが退学した理由が全く語られず、周囲もソレを知らないと言う不可解。またバンドを組む過程があまりにトートツ過ぎる事など、でしょうか。
何より「イイ作品だった」と心に残るものが薄いのが気になります。2時間と言う尺で巧く描く難しさでしょうか。でもルックバックは1時間でソレが出来てます。つまり情報量? 前後半2部構成、TVアニメ向きだったかも?
あ、3人の練習風景でテクノな楽曲を演奏してるシーンがYMOっぽかったデスネw ドッテンアーメンもキャッチーな曲で耳に残ります。
そして締めの『ミスチル』は、個人的に本作に全くそぐわないと思いました。ナゼにミスチル?と思ってたところに、EDテロップ内に『川村元気』の名を見て、何か納得‥‥
最後に中の人問題。今作は『丸太』ではないにしろ、シーンに合わない台詞回しやシッカリ発声できていない所が散見。それがメインキャラ全てに。やす子位で丁度いいのかなと。
(文中敬称略)