「物語の展開は淡白だが山田監督のイメージのシャワーを浴びる感覚で見ると心地よい」きみの色 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
物語の展開は淡白だが山田監督のイメージのシャワーを浴びる感覚で見ると心地よい
山田尚子作品としては、オリジナル企画でもあったテレビアニメ『たまこまーけっと』(映画版もですが特にテレビ版EDなど)のガーリーな感覚や楽しさに、磨きをかけて淡い物語を淡い彩色の映像で見せるカタチで落とし込んで、そこが好きな人にはとても心地よい作品。
少しネタバレあり
人の輝き的な色を見る事のできる少女のトツ子(妄想好きなでそばかすや三つ編みなどのルックスから赤毛のアンを思わせる雰囲気)と容姿端麗な「きみ」の女子二人と少し風変わりなルイの三角関係にもならない淡白さや強烈ドラマ性や近頃の重視される伏線回収・成長物語には、ならない外し具合やキャラの行動に眉を顰める人も多そうだが、自分が描きたいイメージを妥協せずに映像に落とし込んだ山田尚子監督の手腕やセンスやはり凄い!そして素晴らしい👍
淡白と言ったが、映像には力がありカットも編集テンポ良いので、イメージのシャワーを浴びる感覚で、学園祭での演奏場面も過剰過ぎずに良い見せ場になっているので、最後に互いの関わりや音楽を通じて変わり進む物語にはなっている。
本作の宣伝などを見ると、男女3人の淡い恋模様も並行して描かれると思ったが、その部分は非常にあっさり淡白なのに肩透かしをうける方もいると思うが、劇中の序盤の女子寮で少女漫画の往年の名作でもある『動物のお医者さん』を明らかに文字った作品が提示されるので、ひょっとして匂わせなのか?と思っている。あの作品を読んだ人なら分かるが、当時の少女漫画では、珍しく大学生男女が肩を並べるのに恋愛感情を持たない作品で、作者も読者から指摘されたのをネタにするぐらい珍しい作品だった。(まあ佐々木倫子マンガには恋愛要素は希少で奇人変人群像劇か得意な印象)
トツ子を見守るシスター先生の過去などは、山田尚子と脚本吉田玲子コンビの出世作的傑作『けいおん!』などを想起させる設定でちょっとニヤリ😁
脚本は山田監督とは京都アニメーション時代から深く関わり映画では『リズと青い鳥』や『若おかみは小学生』や実写映画の『のぼる小寺さん』や湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』・『きみと、波にのれたら』などや『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』2部作などなどの傑作を担当してる吉田玲子で、どちらかといえば原作付き作品を映像化する時の解釈や構成に腕を奮っている印象だが、今回に限らずオリジナルも割とそつなくこなしていて、本作では物語の起承転結や完成度より山田監督のイメージを補完するカタチで携わっているのだろうと思う。
アニメ映画として作画は隙のない高いレベルにあるが、個人的にはキャラクターデザインへの拘りが、目を見張る部分で、主人公のトツ子はいわゆるアニメ美少女からやや外れるふっくらした出立ちで、従来のアニメ作品だと容姿端麗なきみが主役で、友人ポジの女の子になるのを、突き抜けた明るさと行動力と豊かな仕草によって物語の推進力になっている。(たまに少女マンガの主役になるタイプだが)
気になるのは、突然エンディングに流れる大物ミュージシャンの主題歌で、劇中で確か使われてないので唐突でオヤ?と感じるかものだが、東宝側でプロデュースしてるの腕利きの川村元気氏が、絡むのだからもしかしてその影響なのか。
それとクレジット終わりにあるのは続きを暗示させているのだろう。
正直、分かりやすく強い感動やドラマを期待すると肩透かしかもしれないが、映像を紡ぐ映画としては、充分な作品で、そこが評価の分かれ目にはなるが、新海誠や細田守と並ぶ東宝の看板編成の作品で、自分の作家的ビジョンを出した作品なので見る価値はある。