「幸福感を煮詰めたような映画」きみの色 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
幸福感を煮詰めたような映画
作中に数回出てくる「ニーバーの祈り」というのはアメリカの神学者ラインハルト・ニーバーが書いたもので、少し長くなるが「変えなくてはならないものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして変えられるものと変えられないものを見極める賢明さを、神様、私にください」。これは、自分の居所を求めつくり出そうとしている人のための警句のようなものだと私は解釈している。
さて、この映画では、嫌な人間は一人も出てこないし、主人公たちを追い詰めるような逆境も描かれない(きみ子の退学はそれにあたるが詳細は示されない)主人公たちは、長崎の美しい風景や、街並み、充実した学園生活などに囲まれ経済的にも精神的にも安定した環境で暮らしている。でもそれは与えられたものであり自分たちからもとめもとめられたものではない。だから主人公たちは自分たちの居所を探して疾走する。それが「わたしたちの色」探し、つまり自分のパーソナリティとそれを受け入れてくれる仲間、そして「わたしたちの音」探しなのである。
主人公たちの望みは実現し、観客である我々も束の間の幸福感に浸ることができる。それは山田尚子の他の作品でも同じ(もう少しにがい味のものもある)。彼女の作品は幸福感を純粋無垢に取り出して差し出してくれる装置であるということなのだろう。そんなの押し付けだししょせんは絵空事だっていう人もいるかも。でも音楽であってももしかして絵画作品なんかでも幸せな瞬間を作り出してくれるクリエーティブっていうものはあるわけで得難い価値がある、四の五の言わないで黙って受け取りなさいよって思うんだが。
こちらも共感ありがとうございます。
二ーバーの祈りの全文ありがとうございます。
こちらは1951年(昭和26年)に発表された物だったのですね。現代の社会は移り変わりが激しくピッタリでありながら、人間が生きていく上での普遍的な物を突いていたと思わされました。ライフステージの変化とか…。
与えてもらった物も美しいけれど、自分たちだけの色を探すことが自我を確立する思春期らしくて素晴らしいし、反抗期や親子の反目なんて一生ついて回る人もいるから、本作の幸せを多くの人に素直に受け取ってほしい物ですね。