「【”♬水金地火木土天アーメン♬。そして、各々の色彩。”悩みを抱える若き3人の男女の出会いと結成したバンド”しろねこ堂”の演奏シーンを柔らかく美しい絵柄で描く。テルミンの演奏シーンは珍しいな。】」きみの色 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”♬水金地火木土天アーメン♬。そして、各々の色彩。”悩みを抱える若き3人の男女の出会いと結成したバンド”しろねこ堂”の演奏シーンを柔らかく美しい絵柄で描く。テルミンの演奏シーンは珍しいな。】
ー 山田尚子監督作は、どれも好きである。今作でも展開される柔らかく美しい色彩で描かれる若者達の姿。
但し、今作ではストーリーテリングはやや粗い。
だが、キリスト教系女子高の寮生で生活しながら高校生活を送るノンビリ屋の”人が色で見える”トツ子や、美少女で青い色に見える高校を中退し古本屋しろねこ堂を営むきみや、後継ぎを期待されていながら音楽創作をしているルイのキャラが良く、ホンワリとした気持ちで観れる作品である。-
◆感想<Caution!内容にやや触れています。>
・面白かったのは、ルイがテルミンを演奏している事である。私は、映画ではテルミン演奏シーンを初めて観た。少し、嬉しい。
・尺が100分しかないので、きみが高校を中退した理由や祖母と暮らしている理由はハッキリとは描かれないし、ルイが後継ぎを期待されている事もやんわりとしか描かれない。
だが、ここはこの作品の穏やかな流れに身を任せるのが良いと思う。けれども、寝ちゃだめだよ!
・トツ子の寮の部屋のベッドに刻まれていた”Gods Almighty"という言葉。それを刻んだのがシスター日吉子だった事が分かるシーンも、”若き時は、好きな事をやって良いんだよ。キチンとした大人になるよ。”何て、勝手に思ったりしていたな。
素敵なシーンだったな。
■何よりも良かったのは、トツ子、きみ、ルイが結成した”しろねこ堂”が学園祭でエレクトリックロックを演奏するシーンである。
それまで、比較的静的トーンで淡々と進んできた物語が、この演奏シーンで一気に色彩を増すからであるし、”水金地火木土天アーメン”も、ポップで良い曲である。
何よりも、色々と柵を抱えていた3人が楽しそうに躍動しながら演奏する姿が良いのだな。ルイがテルミンを演奏するシーンも良い。
<今作は大きな出来事は起きないが、悩みを抱える若き男女が音楽を通じて心が一つに成り成長する姿を柔らかいトーンで描いた作品である。
そして、ラスト、旅立つルイが乗る船に向かってトツ子ときみが”頑張れ!!”と叫び、ルイが持っていた五色の別れのテープが空に舞うシーンはとても美しかったのである。>