劇場公開日 2023年2月3日

「愛しさと切なさと心強さと、ちょっとスプラッタ」ベニー・ラブズ・ユー がばちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愛しさと切なさと心強さと、ちょっとスプラッタ

2023年6月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

萌える

当方、ホラー映画は好きだけど、耐性はあまりなく、なんなら耳を抑えて薄めで見る事もしばし。

ただ今作については、怖さグロさは漫画チック。臓物や生首もコント番組に出て来そうなクオリティ。びっくり箱的な大きな音による驚かせはありつつも、ビクッとなる事で、頭が少しバグり、作品の面白さを倍加させるスパイスとなり丁度良い感じ。

怖いのが苦手な方も(余程苦手でない限り)安心してご覧になれます。多分。

予算もスタッフもすごく少ないのでしょうね。エンドロールがあっという間に終わってびっくり。流れ切るのに1分かかっていない!監督、脚本、主演が同じ方らしいし、カメラスタッフなんて3人しかいなかった。

それなのに、カメラワーク、構図、テンポ、演出は抜群に素晴らしく、特にクライマックスの殺陣の迫力は必見です。

また、ぬいぐるみの表情なき表情が感動的なまでに豊か。ラストのスローモーションシーンは、キャラクターの喜怒哀楽が総て表現されているかのようで、その美し刹那さに思わずため息が漏れてしまいました。

それは『ミーガン』や、日本の川本喜八郎作品のような「まるで本物の人間のようだ」という性質のものではなく、あくまで「ぬいぐるみ」が「ぬいぐるみ」のまま生命を吹き込まれ、「ぬいぐるみ」としての矜持を全うせんと躍動するからこそ。

そう、全ては「大好きなご主人様のために」。

だから、こんなにも愛おしくて、切なくて、心を揺さぶられるのでしょう。

無論テーマ的に万人向けではないかもしれませんが、ぬいぐるみに、そして生命なき物に鼓動を感じた事がある(ホラーが苦手でない)人には、ぜひチャレンジして欲しい作品です。

うまくピースがハマれば、生涯の友達になり得る作品かと思います。

【補足】
犬猫好きな方には嫌悪を覚えるかもしれないシーンがありますので注意。(個人的にはブラックユーモアの範疇でした)

がばちょう