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カザフスタン共和国を舞台に、イスラム過激派によるテロから国を守るために戦う諜報部員の兄・スルタンと空軍パイロットの弟・ベクザットの活躍を描いた軍事サスペンスアクション。
人生初のカザフスタン映画!
カザフスタン。カザフスタン…。カザフスタン……?…どこよ!あっ!カザフスタンどこよ!!
という訳で、カザフスタン🇰🇿について色々と調べてみることにしましたー。
正式名称はカザフスタン共和国。元ソビエト連邦構成共和国の一つ。
中央アジアに位置しており、人口は約1,960万人。面積は世界第9位となる272万4,900㎢で、これは日本の約7倍の大きさであり、内陸国としては世界最大ということになる。
首都はアスタナ。通貨はテンゲ(2024年現在、1テンゲ=0.33円)。国語はカザフ語だが、公用語はロシア語である。
民族は約70%がカザフ人で、約20%がロシア人。カザフ人はモンゴロイドを基本とした遺伝子を有しているので見た目は日本人に似ている。この映画の主人公である兄弟も、多分カザフ人なんだろう。
ちなみに宗教は国民の7割以上がイスラム教徒で、キリスト教徒は2割程度ということである。
GDPは2909億9400万ドルで世界第48位。ただ、GDP成長率は12.2%とかなり高い(日本は1.3%😢)。
これは、石油や石炭などの天然資源の豊富さによるところが大きい。特にウラン鉱は世界1位の産出量を誇り、世界シェア率が約4割という驚きの数字を記録している。
原発の稼働に欠かせないウランだが、実はカザフスタンに運転中の原発はない。作中、マンギスタウ州にある原発がテロの標的になるが、ここは1999年に老朽化を理由に廃止されている。
カザフスタンは、あの悪名高い「セミパラチンスク核実験」により現在でも多くの人々が健康被害に苦しんでいる。カザフが原子力発電所に頼らないのは、資源大国であるという理由のほかに、反核の意識が国民に根付いているからなのかも知れない。…ちなみにこれまで3度核による災禍を経験した日本には、現在建設中のものも含めて36基の原発があり、そのうち12基が絶賛稼働中である。うーん…。
さて、ここからはカザフスタンの映画事情について調べてみよう。
コロナ前である2017年のデータによると、カザフスタンにおける年間映画製作本数は74本。これは世界平均よりも10本くらい少ない。日本の約1/8といったところである。
映画市場規模は年間5,680万ドル。世界平均が4億8,000万ドルなので、それを考えるとまだまだ映画市場は発展途上であるといえるだろう。
「そんな映画弱小国の作品、絶対ショボいっしょ〜笑笑」などと、人によっては馬鹿にしてかかるかも知れないがそれは大きなミステイク!
冒頭から超本格的な対テロリスト攻防戦が展開される!韓国映画を思わせる洗練されたルックと腰が入ったアクションは見どころたっぷり。
兄・スルタンと弟・ベクザット、ダブル主人公で描かれる映画なのだが、基本的に物語を引っ張るのは兄。
この諜報部員の兄ちゃんを演じるダニアル・アルシノフさん、凄く味がある良い役者✨ちょっと若い光石研みたいな顔をしており、常にくたびれた表情をしているんだけど戦ったら超強い凄腕スパイ。そんなん一番かっこいいやつやん。このダニアルさんの雰囲気も韓国映画っぽい。やっぱり韓国映画の影響力ってすごいんだと、この映画を観て思い知らされました。
鬱病患者みたいな兄に対して、弟の方は超自信家。プライドが高くて上官の言う事も聞かないが、パイロットとしての腕は超一流。…はいもう完全に『トップガン』(1986)のトム・クルーズそのまんまです💦
鈴木福みたいな幼い見た目してるのに態度がデカいからめちゃくちゃムカつく。恋人に対する態度もデカいし戦闘機を私物のように扱うし、正直全く好感を抱けない人物である。無理やり付き合わされて停職になった相棒が可哀想すぎる。
CGのクオリティは拙いし、正直この『トップガン』もどきパートは今ひとつ。クライマックスの展開は確かに燃えるのだが、もう少しキャラクター描写を練って欲しかった。ロブ・コーエン監督の『ステルス』(2005)を観た時も思ったが、やはりトム・クルーズ以外がトム・クルーズを演じるのはキツい…😓
兄弟の絆を描きたいがためのダブル主人公なのは理解出来るのだが、兄の方だけで良かったんじゃないかというのが素直な感想である。
弟のパートがなければ、もっと中東潜入パートを丹念に描けたであろうし、あの存在感の薄い相棒ももっと掘り下げることが出来たんじゃないかとも思う。
肉体を使ったアクション描写が良かっただけに、お話の弱さが余計に気になってしまった。
と、ついつい不満が多くなってしまったが、これは想像していたよりもずっと良かったからこそ。エンタメ要素もりもりでかなり楽しめた♪
ロケーションも素晴らしい。ウスチュルト台地というまるで火星のような秘境の風景は、ハリウッド映画に勝るとも劣らない壮大さ。身近にこんな良い撮影ポイントがあるなんて、それだけでカザフスタンって超映画制作に向いてる国じゃん!
カザフスタン映画ということで舐めていたが、ぶっちゃけ画作りとアクションにおいては邦画よりも全然質が良い。
2050年までに、世界トップ30の先進国に入ることを目標に掲げているカザフスタン。もしかすると、30年後には世界中でカザフスタン映画が大ブームを巻き起こしているのかも…、なんて期待させてくれる一本でありました!