「居場所から逃げられない女性の心情リアル」波紋 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
居場所から逃げられない女性の心情リアル
(完全ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
※本来の長いレビューを書く時間が最近ないので、短く
この映画『波紋』は、居場所から逃れられる男性と、居場所から逃れられない女性の話だと思われました。
主人公・須藤依子(筒井真理子さん)の夫の須藤修(光石研さん)は、2011年の福島第一原発事故の放射能汚染のニュースを見た後で家から失踪します。
夫の修は10数年後に癌に侵されたのを理由に家に帰って来ますが、主人公・須藤依子はずっとその家に居続けていました。
須藤依子はただし新興宗教の信者になっていました。
この映画を観て、なぜ男性の夫の修は家庭から逃げることが出来て、女性である妻の主人公・須藤依子はその場から逃げることが出来ないのか?
私的には、女性はその居場所で子供を産むからではないかと思われました。
子供を産むことなく育てることにも潜在的に無責任である少なくない男性は、その場から精神的含めて逃げることが出来るのだと思われました。
しかし女性の方はそうは行きません。
この女性男性の精神的な差異が、男性への怨念にも満ちたこの映画の根本であり、それによってリアリティある(男性にとって)恐怖を表現していると思われました。
主人公・須藤依子が、おそらく自身にとって救いの未来であった歳上の水木(木野花さん)の部屋がゴミ屋敷になっているのを見て涙する場面がありましたが、私的もここで深い感銘を受けました。
(その後、その水木の部屋は精神的に立ち直った須藤依子によって綺麗に掃除される訳ですが‥)
居場所から逃げられない女性の怨念の刃を正確に突き刺した本作は、個人的にも深い映画になっていると思われました。
惜しむらくは、波紋の会話イメージ場面のCGがもう少し質が高ければとは思われはしました。
しかし深さある映画だったと面白く鑑賞しました。