「パッと見よりずっと気さくな映画」波紋 デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
パッと見よりずっと気さくな映画
見る前は頭使って見るタイプの映画の予感がしてたんだけど、いい意味で全然そんなことはなかった。感じるままに見ていい、ブラックな笑いがたっぷりの、でも泣けるところもある、面白い映画だった。ソール・ライターみたいなラストシーン、狙いすまし過ぎてるけど、まんまと好きだった。
新興宗教のシーンも好き。舞台挨拶で荻上監督は、自身が通っていた全寮制の高校の夕礼を参考にしたと言っていた。「男尊女卑で大嫌いな学校でした」とも。でも、映画では信徒たちの集まるシーンはいつも面白くて笑えたので、何事もムダにはならないもんだなあと思った。
いろんな水が出てきて、水ってなんなんだろうかと、ちょっと考え込みそうになる。形もなく色もなくて、そのわりに「聖なる」とか「毒素が」とか“色”をつけられやすくて。
筒井さんは、舞台挨拶やインタビュー記事では、こんなに生真面目で礼儀正しくて良識派っぽくて、どうやってお芝居なんかするんだろうと思うのに、映画の中では狂気っぽさを弾けさせたり薄めたり自在にやっていて、奔放な天才のしていることにしか見えないのが本当にすごい。
私は木野花さんに泣かされる率が高い。『閉鎖病棟』とか『ユンヒへ』とか。依子が泣くところで一緒に泣きたくなった。あと「みんな、なかったことみたいにしてるけど~」というセリフにうなずく。乗り越えてしかるべきもの、他の人はちゃんと乗り越えているもの、なのに自分だけつまづいてそこから進めないものってあるなあと思うので。
磯村くんは父親が出て行ったときの母親の様子を回想してしゃべるという芝居臭くなりそうなシーンも自然にやっていて、なんかもうありがたいなと思った。わざとらしくやられたら、こっちまで恥ずかしくなりそう。舞台挨拶で監督が「(磯村くんは)たぶん現場が好きな人なんだと思うけど」と言っていて、ああ、そうなんだろうなと思った。「(磯村くんは)足が長いんですよ!」とも言っていて、それは知ってるなと思った。