劇場公開日 2023年5月19日

「原作作品の良さを活かしつつ、藤井作品としての独創性をしっかり際立たせた一作」最後まで行く yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原作作品の良さを活かしつつ、藤井作品としての独創性をしっかり際立たせた一作

2023年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

藤井道人監督がインタビューで表現しているように、岡田准一のキュートさ、綾野剛のクレイジーさが終始物語を牽引しています。

加えて最近ますます活躍が際立っている柄本明も、近作の印象から絶対何か企んでいそうな不穏さを終始漂わせており、こちらも俳優としての円熟ぶり、底知れなさを見せてくれます。岡田准一の妻を演じる広末涼子の人生に疲れた感じも、最初は広末涼子と分からないほど真に迫っていて、こちらもまた派手さはなくとも見事な演技です(雑誌「スクリーン」の藤井監督インタビュー記事で広末涼子に言及した箇所は、ちょっと笑える誤字がある上、現時点で読むと色々考えさせられる内容も含んでいて、これもまた印象深い…)。

2014年公開のオリジナルの韓国版は、脚本の巧みさと疾走感が素晴らしかったけど(そのためフィリピンなど様々な国でリメイクされた)、本作は藤井監督独自の場面転換と人物造形の掘り下げなど大胆に手を加えており、単なるリメイク作品という枠を超えて、一つの映画作品として高い完成度と独創性を獲得するに至っています。

前半は岡田准一扮する刑事工藤が、次々に襲いかかる難局にどう対処するかを、ちょっとコミカルに見せる面白さがあったんだけど、後半はやや設定が現実離れしてきて、こうした切り抜けのスリリングさがやや減じたところだけが少し残念でした。

とはいえそんな気になる要素は全体から見るとほんのごくわずかで、トカゲに関するある挿話とそれと連動したクライマックスの描写など、まさに最後まで楽しませてくれる一作でした!

yui