「静かな言葉が、心をほどきます」ミステリと言う勿れ 藤宮・アーク・紗希さんの映画レビュー(感想・評価)
静かな言葉が、心をほどきます
『ミステリと言う勿れ』は、事件の謎よりも“人の心の奥”を描いた優しい会話劇でした。
主人公・久能整の話す一言一言が、観ている自分に語りかけてくるようで、まるで心の中を静かに整理してくれるカウンセリングのような感覚になります。
菅田将暉さんの演技は本当に見事で、声のトーンや間の取り方、ちょっとした表情の変化に整という人物の誠実さが滲んでいました。
広島の風景も美しく、静かな港町の空気が整の“内なる孤独”と重なって映ります。
原菜乃華さん演じる汐路の物語はとても切なく、整が彼女にかけた言葉がいまも心に残っています。
全体としてテンポはゆったりしていますが、その分だけ言葉の重みが際立ち、最後にはじんわりと温かい余韻が残ります。
「人はなぜわかり合えないのか」「なぜ傷つけ合うのか」——そんな問いを、穏やかに見つめ直させてくれる映画です。
派手さはなくても、静かに心に届く力を持った作品でした。
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