「息詰まるスパイサスペンス。」崖上のスパイ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
息詰まるスパイサスペンス。
ハルビン市内の再現具合、雪降る街中での迫力あるカーチェイス。特にあの雪はどうやって撮影されたのか等々、さすが中国が誇る巨匠の作品だけに映像が素晴らしい。また内容的にも一秒たりとも緊張感が途切れず見ごたえがあった。
ただ、彼らスパイの任務が日本軍の蛮行を白日の下にさらすのが目的ならば、日本軍収容所での残虐行為を作品冒頭で見せるべきだった。そうすれば観客はよりその必要性を感じられただろうし、またスパイに拷問などするのは特務機関に属する中国人で本作には悪役としての日本人は一切出て来ない。この点は日本に配慮したのだろうか。
あと、スパイ四人の背景があまり描かれないので何故彼らがあそこまでして任務を全うしようとしてるのか、彼らに感情移入しづらかった。彼らの人物像が端的にでも描かれていればもっと見ごたえはあったと思う。
あともう一つ気になった点は、脱出に失敗した張が何故拳銃自殺しなかったのか。再度捕まれば自白剤を打たれ仲間を危険にさらすのは目に見えていた。作品冒頭で薬物を配った伏線がこれでは生きないだろう。薬は服を脱がされていたので仕方ないとしても結局自白させられ、処刑されてしまうのだし。
映像は良かったが、内容的には少々物足りなさが感じられた作品。
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