怪物のレビュー・感想・評価
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それぞれの良さが詰まった、バランスの良い作品
是枝監督の作品は好きでほとんど観ています。
期待をせざるを得ないですが、期待通りの作品となっていました。
是枝監督らしく、社会問題を勧善懲悪でなくリアルに描きつつ、
坂元裕二の脚本で観る人を最後まで惹きつけ、
坂本龍一の音楽で雰囲気を一気に持っていく。
それぞれのよさが十二分に伝わってきました。
諏訪湖のショットと音で時間を説明する、
是枝作品には欠かせない、主役である子供たちの活き活きとした演技、
隙間からのぞき込むカメラワーク、など演出も印象的。
ただ、欲を言えば、鑑賞後のモヤモヤがほしかった。
言い方をかえれば、きれいでキラキラした作品であり、是枝監督がいつも描く、現実はこんなに甘くない、というメッセージがあまり感じられない。
期待と、名スタッフが揃うと、あまり挑戦的なところも難しくなるのかな、という印象ももちました。
総じて、映画としては面白く、社会問題としてもありきたりではおるが、うまく絡められている作品でした。
2023年劇場鑑賞74本目
怪物は…
ようやく是枝監督作品の面白さを理解出来た。彼の作品は常に社会性を持って、映画的なファンタジーを作り出す。カンヌが認める才能に気付けることが出来た。彼の本質は社会における欺瞞を映画というファンタジー装置を使って、上手く処理する。成熟した大人のパンクスだと感じた。人間、それも個人としての人間の尊厳は絶対に守られるべきであり、尊重すべき金科玉条である。私たちは社会のために生きる前に、個人として生きる。そして、個人を主にして社会を作る土台が完全に崩れている日本、否、世界だからこそこの作品が輝くのだ。あえて言いたい。日本国憲法は常に私たち庶民であり、国民の側にあり、私たち一人一人が日本の代表である意識を持つことは、大それたことでは無く、むしろ当たり前のことだと、私はこの作品を鑑賞して、感じた。それこそ「穿った」見方だと思う。彼の次作が楽しみである。
怪物は閉鎖的な環境であり、凡庸な個人、個性を全く認めない社会のことである。目玉が二つだと人間、一つだとカタワ扱い、全盲だと障害者、三つ以上だと神か妖怪。カテゴライズにこだわる社会が「怪物」なのである。私たちは猛省し、心情の大改革をすべき現代社会に生きているのだ。同調圧力に屈することなく、楽しく自由に生きて、個人個人が第一に尊ばれる社会がこの未来のない日本には必要なのである。
残酷だけど、ずっとずっと美しい
怪物だーれだ。
映画に出てくる"怪物"は一体誰なのか?
観客はタイトルに引っ張られ、このような考察をしながら映画を観るだろう。
学校の汚れをガリガリと落としている校長か?保利先生か?母親か?もしくは子供たちか?そのような奇妙さが前半この映画に蔓延している。得体の知れない不気味さである。
そして母親の視点、教師の視点となるうちに物語の全貌が少しづつ明らかになる。
教室の真実は大人からは決して見えない。まさにブラックボックスだ。そして大人たちの"物語"によって子供たちは勝手に解釈されていく。
最後に子供たちの目線が描かれる。教室は残酷だ。まだ鎧のない子供への言葉は、ダイレクトに傷付ける。コミュニケーションとは、どうしても加害性をともなう。だからこそ子供たちは、その残酷さも美しさも両方を大人よりも痛いほど知っている。
大人の視点で描かれたトンネルは不気味だ。でも、子供たちからしたらあそこは唯一の逃げ場なのだ。
誰かを怪物に仕立てようとする観客を、私たちをこの映画はまるで批評する。
確かに終盤になるにつれて映画の物語性は少なくなる。そこにはただ社会に揉まれながらも、自分自身で行き場を見つけ出す子供の姿が描かれる。是枝監督らしく、子供たちに優しく繊細にレンズ向けている。よって物語の終盤、観客は子供たちと同じ目線で傷つきながら、それでも美しく共に過ごす。
中盤までは言葉で語りつつ最後はやはり映像で語る。絶妙な塩梅である。
最後はなんて美しいのだろうか。この映画は結局何も変わってないし、変わることなんて出来ないだろう。ただそれでも、最後の映像があるだけで観客は心の底から救われる。
本当に素晴らしい映画はテーマに沿って人が動いていない。必然的にそこに存るのだ。それをカメラでどうにかすくい取る。それを見た人がテーマを勝手に見出す。監督の発言もこのような意図があったのだろう。
怪物は人が生んだもの
ザワザワします。
子役2人あっぱれです👏
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世の中で起こるあらゆる事由に対し
一点だけを見てはならない
あらゆる角度から見ないと何が正解なのか
本質は何なのか分からないものだと改めて感じます。
いやむしろ正解は1つではないのかも知れません。
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本作は、始めから、不安を掻き立てられ、
モヤモヤさせられ不快になる時間が長く続きます。
全体像が見え、そこに真の「怪物」は誰なのか。
ラストの展開についても見る者に委ねる。そんな感じです。
現代社会の歪みや闇を「小学校」と言う小さな
コミュニティの中で存分に描かれていて
ゾワゾワします。
身近なところに、そこかしこに「怪物」は存在する。
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子役の少年2人がとんでもない存在感を放ち
安藤サクラや田中裕子が霞んでしまうほどです。
常日頃、何かと韓国作品と比較しがちですが
こんな子役たちがいるならば、まだ安心だな。
なんて偉そうに思いました。
感謝!感謝!そして感謝!
断片的な事象としての事実に遭遇した人それぞれの勝手な思い込みによって無意識に作り上げられていく心の中の真実。決して覗き見ることの出来ない相手の心の中。軽々しく伝播されていく無神経で根拠のない噂という名の凶器。自己中心的かつ残酷な言葉の暴力。自分勝手な保身からの責任転嫁。軽んじられる責任感。人間の心の中に無自覚に潜む「怪物」たち。
監督 是枝裕和と脚本 坂元裕二の記念すべき初タッグ作品。「万引き家族」の安藤サクラ、「それでも、生きていく」「最高の離婚」の永山瑛太、「Mother」「Woman」の田中裕子らの秀逸な演技に自然に引き込まれていく。子役二人の瑞々しく自然な演技も素晴らしく坂本龍一の音楽と合わせて記憶に残る作品に出逢えた事に感謝。
怪物ってなに?
噛めば噛むほど味がある
カンヌに輝いた坂元裕二の脚本を是枝監督が撮る。怪物とは誰?怪物とはモンスターなのか?
デストロイヤーなのか?
加害者のことか?
それとも自分と異質な者は皆、怪物なのか?
羅生門を思わせる3幕構成。一幕目の怪物は得体の知れない学校の態度。
2幕目は所謂モンスターペアレントと大人の想像を超える子供たちの態度。子供思いの保利先生が体裁の為に社会から事実上抹殺されてしまうまでの正に全てがモンスターなお話。
そして3幕目が子供達の多様性。自らを受け入れようともがき成長して行く様。
色々と取れる結末ですが、坂本龍一さんの音楽とあいまり、光に向かって行く希望のラスト。それにしても子役の2人、上手すぎます。是枝監督、お見事です。
私には非常に余韻に浸れる一本でした。
ちなみに、きっと猫の死骸のことで嘘をついた女の子は湊くんが好きだったんだろうね。
大人は何にもわかってない
子どもたちが良かった
公開前にノベライズ本を読んでいたので、内容は把握した状態。本を読むこと自体も久々だったけど、本当に引きこまれてあっという間に読み終え、公開をすごく楽しみに待っていました。
上手く言葉には出来ないけど「怪物だーれだ」というワードチョイスというか、これはほんと素晴らしいと思いました。坂元さんの脚本、好きだなぁと。。
湊と依里のシーンが特に好きでした。
起こっている事実はひとつでも、見え方が異なることで真実が変わっていく。
まさしくだなーと。
(これとは関係ないけど ドラマ99.9の中であった内容)
レイトショーで鑑賞後、余韻に浸りたくなり プラプラと少し歩いて、やっぱり映画っていいな と思った夜でした。
好きな監督さん、脚本家さん、役者さんなど、
きっかけはなんでも、これからも『映画』を思う存分楽しみたいです。
ありがとうございました
さすが…
観て良かったです
「怪物」と決めつけることの救い
誰しも、誰かの目にはモンスターになり得る。
それは当たり前のことなのだけれど、相手の話しをしっかりと聞き入れようとせず、最初から「モンスター」と決めつけてしまうのと、相手の態度が理解できず、徐々に「モンスター」に見えてくるのでは、まったく違います。
子どもたちのことは懐の深いところで受け入れ、救いを与えようとする校長が、保護者に対してははなからモンスターであると決めつける矛盾と、現実。
先生は強いから、少しくらい悪者にしても大丈夫だという子どもの決めつけもまた、「優しい大人」を「自分とは違う何者か=モンスター」と決めつけているということになるのでしょう。
モンスターを覗き込むものもまた、モンスターになってしまう。そのスパイラルをどこで断ち切るか、断ち切れるのか……というところで、一見理不尽な目にあっているとしか見えない保利先生にも、なにがしかの救いがあるのでしょう。
保利先生は、自分をモンスターだと決めつけた相手に対して、「おまえはモンスターじゃない」と声を上げる。そういう意味では、この映画で一番の救いなのだと思います。
ただ、「この世にモンスターはいない。モンスターを作り出す状況と、モンスターと見なす人がいるだけだ」と、楽観的に見ることもできません。
中村獅童演じる星川清高に関しては、むしろ積極的に「怪物である」と決めつけ、なまけものの死んだふりではなく、しっかりと成敗せねばならないのではないでしょうか。
あるいは、「こいつは化け物だ」と決めつけることが、救いになることもあるはずです。
星川清高が怪物にならずに済むような状況。それが本当の救いなのでしょうが、どうすればそんな救いがもたらせられるのでしょうね。
ラストシーンは、「一度死んで生まれ変わらなければ、バリケードの向こうに行けないのでしょうか?」という問いかけだと私は受け止めました。
最後に。
カンヌには言いたい。
ネタバレやめてくれ。
何故か泣いてしまった
無邪気<邪悪
最初に断っておくと、私、自分のレビューを書く前は、作品に関する解説や批評は読んだり聴いたりしないようにしているのですが、今回は観終わってすぐ、我慢できずに前日のラジオ番組のライムスター宇多丸さんによる「是枝監督インタビュー」を聴いてしまったため、少々影響を受けてしまっているかもしれません。
私にとって、是枝さんの監督作品は「リラックスして観られるもの」と、「観る前から緊張感のあるもの」があり、今作は言わずもがなの後者。そのため、疲れ気味だった先週末、絶対に混んでいるであろうこの作品を観に行くことは避け、集中して観られるように休暇をもらって、平日の109シネマズ木場の「エグゼクティブシート(会員は一般席と同額)」で鑑賞です。木場、平日とは言え空いてるな。。。(若干の複雑な思い)
人は見えないことや理解できないことに対し、「恐怖心」を抱くことがあります。そして、真実はたった一つではなく、そこにいる人の分だけあるのです。三部立てに構成されたこの作品はそれぞれの視点で語られ、観ている我々に対して徐々に起きた事に厚みを持たせることで「こういうことなのか(か?)」と解釈させてくれるものの、あくまでどう思うかは「真実」同様に観る人の数だけありそうな、「何度かは観たい」作品に仕上がっています。
特に一部である母・早織(安藤サクラさん)の視点は観ていて「あれ、是枝さん、何かいつもと違う気がするけど大丈夫?」と思って観続けますが、これ、恐らく作り手側の思う壺だと思います。何なら、解り易くバイアスをかけたような展開や演出は感情を持っていかれやすいため、二部、三部と進む都度に見える別の視点から、前に抱いた自分の感情の薄っぺらさを思い知らされ、だからこそ観ながらに「もう一度観直したい」と思いつつ、要所要所に紡がれる坂本龍一氏のピアノの旋律に心が揺らされます。
保利役の永山瑛太さん、恋人・広奈(高畑充希さん)からも散々いじられる通りの、どこか不気味な感じが醸される「(えがおでなく)笑い顔」が上手過ぎてしびれます。あの雰囲気で子供たちと相対する姿は、迂闊で危なっかしく、10歳くらいの「無邪気<邪悪」な彼・彼女たちにかかると尚更に、保利の顛末に必然さを感じてしまいます。
一方で保利と同じ側の立場である(はずの)校長役の田中裕子さん。今回も役としても俳優としても実に「請け負ってるなぁ」と感じます。落としどころが難しい本作に対し、この校長の存在がどこかハマりがいい上に、この人物の憎み切れなさ、そしてストレートではないのに紛れもなく包容力を感じる存在感。一部、二部で何気に気になる調子の外れたラッパの音が、三部のそのシーンで思わず胸が熱くなります。
そして、やはり是枝さんの子役選びとその演出は間違いないですね。メインキャストのお二人、いずれも素晴らしいのですが、私が特に驚いたのは依里役の柊木陽太さんが圧巻と感じました。一見した透明感とは裏腹に、彼の秘密めいた部部に潜む不穏さで、いつしか彼を中心にドライブしていく展開は、三部における湊(黒川想矢さん)とのシーンの全てに、何も見えていなかった大人の一人として、ショックを隠し切れませんでした。だからこその「あのエンディング」がまた凄く、さらにそこで聞こえてくる坂本龍一さんのピアノがまた尊いのです。あゝ。。。
構成、演技、音楽、そして編集、どれもが素晴らしいわけですが、とりわけはやはりカンヌでも賞に輝いた坂元裕二さんの脚本ですね。基本はクラシックなミステリーですが、「怪物誰だ」の一言で引っ張ってこれだけ深く、厚く、そして温かみのあるストーリーは、現実に返って様々な偏見や悪意、狡さなどに無意識であってはならないことを痛感させられました。
もう一度言いますが、もう一度観たい。脱帽です。
カンヌ脚本賞納得!まちがいなく忘れられない作品となりそう!
人はみんな、心に刺さったトゲの痛みをこらえながら生きている
子供も、大人も…
そのトゲは、いじめ、虐待、個人の特異性、
強いられる犠牲、愛する人の裏切り…など、
様々な形で作品中で見せつけられる
それでも人は、
大切な者を痛みから救いたいと願う
親が子供を、教師が生徒を、子供が友達を…
しかしこれが、見事に噛み合わない
同じ時間を共有しているのに、抱える痛みと立場が違うので、それぞれ全く違って見える
特に、子供はまだ自分を守る術がない
その時その時を、嘘で切り抜けるしかなく、
それがまた、大人をも傷つける大混乱へとつながっていく…
坂元裕二の脚本が、
このあたりを実にうまく展開させていて、
唸った!
そして、是枝監督は、
ただ「人」を見せる
ストーリーに結論や結末は特になくて、
人間ってみんな、こんな感じだよね
辛いけど、みんな懸命に生きてるよね
そんなふうに優しい眼差しで語りかける
心の痛みにつぶされそうになりながらも、
緑の中を笑いながら駆けてゆく少年たちの
美しいラストシーンに、
坂本龍一のピアノのメロディが重なったとき、
なぜか涙が溢れてきた
この作品はしばらく忘れられそうにない
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