怪物のレビュー・感想・評価
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映画でしかできない職人芸
3者の視点で一つの事象を描く手法は、
ジャームッシュのミステリートレインや黒澤明の羅生門などでありましたね。映画ならではの大好きなギミックです。
今作はさらにミスリードと嘘が観客を惑わせ、作品の醍醐味になってます。カンヌ国際映画祭の脚本賞も納得!それはないよねという演出も確信犯的で。
安藤サクラさんホントに名演。彼女が出ている作品は、いつものめり込んでしまいます。永山瑛太さん、田中裕子さん、エピソードごとの演じ分けが見事。
真相はどうなのか、誰にもわからない。怪物とはそんな怪しい物語という意味なのかなと深読みしました。是枝監督すごいな。久しぶりに映画でしかできない職人技を観せてもらいました😊
こうあるべきという怪物
子どもの世界は大人の世界の写し鏡
残酷すぎて泣けて仕方なかった。
パンデミック後の世界。
この時代に生きる子どもたちと大人。
…そして少年のある感情の芽生え
彼らの世界が一番しっくり来た。
(そうは言っても大人から見た彼らの世界であり、彼らの目には別の世界が映っているんだろう。)
仕合せにはなれない。
子供ももうそれを解っている。
湊のアップ
今一瞬が美しいと、切り取る側も解ってる。監督も、脚本家も、カメラマンも解っている。気づいてないのは少年だけ。或いは気づいているのか…。
大人に変わるほんの一瞬の悪魔的な美しさ。是枝監督はそんな少年を画面にとじ込めるのがとても巧い!
幸福そうな映像や音楽(彼らの心象風景なんだろうか?)でいて、いきなり終わるような予兆もそこかしこにある。その刹那、儚さに涙が流れた。
薄日差す風景が度々映る。一見すると何も起きてはいない。町はいつも通りだ。
これは何を意味してるんだろう…。
あの廃電車
ワイパーのように泥を掻き分ける手や丸い模様。
子供の世界に大人が土足で入ってきた。
彼らは彼らの世界でもう生きている。
子どもは大人の写し鏡。
残酷な“今”に生きていかなきゃならない。
次世代に託すしかない大人側の責任をひしひしと感じる。せめて逞しく生きて行って欲しいと祈るしかないのか…。
楽器の音。あれこそ怪物の唸り声じゃあないのかな。
永山瑛太
ある面から見ると挙動不審に見えるが、別の面から見ると誰も気づかないような事に気づいたりする。
田中裕子
人間の年輪
年の功
擬似祖母
ラストシーンが強烈。
この締めくくり方はスゴい!さすが。
湊と依里の髪型、トレーナーがいつの間にかお揃いになっていた。
黒川想矢(湊)…心の揺れ、ヒリヒリするような演技が素晴らしかった。
柊木陽太(依里)…彼の演技は天性のものなのか?
火事で始まり、嵐で終る。
是枝裕和監督、坂元裕二氏、黒川想矢さん、柊木陽太さん、田中裕子さん、俳優の皆さんに拍手を!!
是枝監督はまた別次元に行った。
怪物ならぬ、怪作!
実写映画の限界を感じたが、同時に実写映画としての最高峰を感じた
何が言いたかったのか分からない。
そういうレビューを度々見かけました。
その通りだと私も思います。
一般的に、物語には二つの意味合いがあるのではないでしょうか。
一つは、命題の提示。
そしてもう一つは、その作品なりの解答。
例えば、友情とはなんぞやと問い、友情とはこれだと示す。
そこまで行って一つの作品だと私は思います。
この作品は、この作品なりの解答を示しません。
2時間という時間を使って、終始私たちに問いかけてきます。
怪物とはなんぞや、と。
ですが、これは仕方のないことなのではないかとも私は思います。
普段、アニメ、漫画などの二次元を好んでいる私からすれば、実写映画というものは情報が観客に伝わりにくいメディアです。
キャラクターの感情一つ伝えることだって、いくらでも誇張が出来る二次元に比べて困難だと言えるでしょう。
同じ2時間という尺であるならば、実写映画というだけで伝えられる情報は限られてしまいます。
けれど、ならばこその今作なのではないかと、私は
考えました。
中途半端に命題を提示し、中途半端に解答を示す。
そうすれば一定の完成度は保てたかもしれません。
けれど、敢えて命題の提示に全てを注ぎ込み、観た者に最大の爪痕を残す。
もしもそのような意図であるならば、これこそが実写映画という範囲での最高峰なのではないでしょうか。
勿論、自分で考えさせられるのではなく解答を示して欲しい人たちには無価値である可能性も存分に孕んでおり、そういった意味では全国放映の映画として欠点ではあるのかと思います。
私は考察も大好きなので個人的には命題投げっぱなし上等で星5をつけたいくらいですが、客観的にレビューをするなら3.5くらいかなと。
後、いくら考えても飴ちゃん食べるのだけはおかしくないです?
メタファ
怪物とは誰のことなのか
そして
観客はいずれ気付く
人ではなく
認識違いの隠喩なんだと
隠喩がいくつかあり
ストーリーのキーに
豚の脳→特異なものの象徴
うまれかわり→現状の環境からの脱出
鏡文字→逆側への思い
三つの視点
母親、教師、子供
の三部構成により
同じシーンでの行動の意味が
徐々に明かに
大切なものを守るために
登場人物がそれぞれ
嘘をつき
まずいことには
沈黙で蓋をしてしまう
その守りたいものの代わりに
差し出すものが何なのか
順番は意見が別れると思いますが
最後の生贄は
本作では教師でした
友達 〉学校 〉いじめ 〉保利
本作で核心を得たのは、
前半、死んだ目をしていましたが
後半は血の通った言動をみせた
校長の言葉
「誰かじゃないとつかめないもの
ではなく、
誰にでもつかめるものが幸せ」
と。
人の根っこの部分に触れる作品で、
教科書にはのっていない
社会の機微に溢れた作品でした
起こっている現象の意味を
読み解く力や知りかたが
身についていれば
自分や周りの人が
少しでも不幸を回避できるのに。
といつも外野が後から…
「怪物だーれだ」認知の歪みによって、誰しもが怪物になりうる
シングルマザーの早織、担任の保利、星川、麦野の子ども達2人からの視点から徐々に謎が解き明かされていく。
本作が面白いのは早織の視点に立てば、生気が抜けたような校長や、普通では考えられないくらいのおかしな学校の対応。とにかく先生達が気持ち悪くて、腹立たしかった。
それが不思議なことに保利先生からの視点で見ると、早織がまるでモンスターペアレントのように映ってしまう。「なーんだ、保利先生、普通にいい人じゃん、可哀想」ってなってしまう(しかし、学校側の対応には憤りを感じる)。
始まったばかりのあの不気味な感じも、時間と共に少しずつ霧が晴れていく。
保利先生、校長先生がここまで違うのは、見る人の視点によって全く違うということを表現してのあえて誇張しての演出ではないだろうか。前半の保利や校長は早織にはそのように写っていたと。
それぞれのシーンがそれぞれの視点でこんなにも変わるのかと、その構成や演出に唸らされる。
その人の視点によって人は誰しも“怪物”になるし、“怪物”として他人から映ってしまうのだ。
そしてもう一つのテーマとして描かれているのはマイノリティ、同性愛。このテーマをついに子どもに持ってきたかと!!とはいえ、最近このテーマ扱い過ぎでお腹いっぱい感はあるけれど。
私が思う本作の1番の魅力は、一つの答えがないところ。
結局のところ放火犯だって、校長が孫をはねたことだって、作文の頭文字の言葉の続きも、星川くんのお父さんのことも、そしてラストの2人の行方も、答えはない。全て観る人の想像に委ねている。
余白を沢山作ってくれることで、私たちは沢山想像して、作品について考え、語り合うことができる。
それにしても、田中裕子の名演にはあっぱれだ。冒頭の不気味な顔や、音楽室で管楽器をレクチャーするシーンとかめちゃくちゃ痺れた。表情で語るとはまさにこのこと。
息を呑むほどの諏訪の景色も美しかった。
そしてエンディングで流れる坂本龍一さんの美しくドラマティックな音楽に涙が流れました。
巧みな演出にぐいぐい引き込まれた2時間だった。
ちょっとよくわからなかった
怪物!?
観終わった後、「怪物!?」って首を傾げる。
それを題したのも、あえてのことかしらとも感じられた。
そもそも映画の内容に対して論ずることなのか!?という気持ちでいる。
と言うのも、今の日常を客観視でみたような感覚だから。
私自身の日常にも、映画の主となるテーマは違えど、コミュニケーションの掛け違いで受け取り方が異なり、思いもよなぬ方向に出来事が進む。
そのため、日頃の出来事とかさなり、自身もであり周りもであり、その要因を映画を通じて見えてきたように思えた。
どう普段の私生活に落とし込めるのか、、、。
物語に対する内容より、通じて日常の出来事に対して、ディスカッションすべきその取っ掛かりを感じた作品であったと思う。
最後に私にはまだ子供はいないが、映画の子役のような感情など芽生えたとき、私は子供の気持ちを解放させ、生きやすくその感情のままでいいのよ!って言ってあげられるのだろうか。問いかけが始まる。
テーマの意味を観るものに委ねる最近の日本映画の悪いところ
実は構成に甘さを感じた
あそこまで教師を貶める理由があったのかな?
その教師は日記から何を読み取ったのかな?
飴をなめるのは前後とも、あの場での行動とも合わない。
カンヌで脚本賞を取った作品だけど、実は雰囲気で強引に押してるところがある。
ラストも何か結論からはぐらかしている気がする。
作文の鏡文字
映画館で観るべし
本当の怪物とは
国内外から高く評価されている是枝作品ですが
今回のテーマは、かなりボヤかして表現されており
作品名の謎を
最後の最後まで解かせず
予想通り示さずに終えました
親
教師
子供
三方からの視点で映画を紡いでいく手法は
芥川龍之介の薮の中で
これまでも数々の作品が引用されたのです
しっかりハメ込めた腕前は
さすがの力量でした
さて是枝さんの言いたかったテーマはなんでしょうか
ネグレクト
いじめ
偏見
同性愛
嘘
多方に渡りすぎて
ちょっと掴めません
ただ心の中に潜む怪物は
大きくも小さくもあれ
誰にでも生息していて
それが表面化するのか
内在しながらも純化していくのか
どんな方向性にも動いていくもののようです
映画のメッセージを掘り下げるのは
実はあまり得意ではないので
他の方にお任せしようと思います
新たな名作
ホモセクシュアリティな感情と人間の幸せとは
この作品は、安藤さくらが単純に教師の子供への暴力(本当は暴力ではない)を、勇気凛々と解決していくストーリーと最初は思っていましたが、途中からその想像は見事に打ち砕かれました。結論を言ってしまえば、本当の主人公である2人の少年のホモセクシュアリティな感情が、嘘を誘発し、引き起こした人間模様だと私には思えました。いじめ問題をさまざまな視点から見ると、真実は全く違うのです。その不思議なストーリー展開は、脚本家の面目躍如なのでしょうか。物語が進行していくに従って、真実が全て明らかになっていくところは、まるで鮮やかな謎解きのようです。時間軸は何度も引き戻されて、これでもかこれでもかと真実を明らかにして行きます。つまり安藤さくらの正義も、永山瑛太の正義も、全て意味を持たなくなるほど昇華していくのです。怪物というテーマについても、出演者たち全てが怪物に見えましたが、最終的には怪物でもなんでもないのです。ただ、全員が縁起の法則によって絡み合い、感情をぶつけ合い、時には憎み合ったり、罵り合ったりしていますが、結局全ての事象はなんの意味もなく、ただ、それを見る人が、幸福だの不幸だのと判断しているに過ぎないということを、この作品では教えてくれている気がしました。ラストの、少年たちが走り回る姿は、青春の喜び、至高の喜びに満ちていましたが、これはどんな人の人生も、完璧なのだと示唆してくれているように思えました。
追記 田中裕子のセリフ。「誰もが手に入れられるものが本当の幸せ」。含蓄のある言葉です。
後半が残念
怪物はいなかった
是枝作品だから結局そうなるんだろうなと思ったけど。瑛太目線の中盤まではすごく面白かった。後半はダレてきて、なんとか小さい方の子役の演技力でもった感じ。
中村獅童がいい味だしてたからもっと掘り下げて欲しかったなー。こどもを虐待する理由が(自分は学歴もありエリートだったのに妻に逃げられ酒におぼれ、頼みの子供が同性愛者なのが許せないから?)もう少しほしかった。
個人的に、是枝作品の一番の怪物は「誰も知らない」のYOUだと思う。
追記
見終わったあとはこんな終わりか。という感じだったが、あとからチクチクと色々なシーンを思い出す。一度見なのに内容を鮮明に思い出せる作品になった。
特別な映画ファンや是枝監督ファンではないのですが、面白かったです!...
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