「「怪物」は私たちが作っている幻影」怪物 parsifal3745さんの映画レビュー(感想・評価)
「怪物」は私たちが作っている幻影
アマゾンプライムで無料配信されるようになったので視聴。是枝監督の作品は、かなり好みです。随分と前にレビューをいくつか読んで面白そーだなーと思っていました。「怪物」という表題がつけられているけれど、劇中、「怪物だーれだ」の遊びがひねりになっているように感じた。「怪物だーれだ」に対して、相手が質問をして、その解答で、怪物が絞られていって、相手が怪物を特定するという遊びだが、質問で分かるのは、ある特定の視点に対する回答、つまり一つの側面でしかない。
この映画は、ある人物の視点から見ると、周りの人間が、まるでモンスター(怪物)のように見えてしまう作りになっている。しかし、それぞれの視点から見えたものを総合すると、誰ひとりとして怪物なんていないっていうことに気づく。怪物に見えてしまうのは、私たちが様々な間接的な映像、事件などを見過ぎていて、それでバイアスがかかって、ついついフィルターの目が見てしまうからなのだと訴えているかのよう。学校は、先生をかばおうとしているとか、親は、子どものためにモンスターになってしまうとか、子どもは何を考えているのか不可解だとか。それが大きなテーマか。
と同時に、「湊」と「依里」の二人が築く世界は、「スタンドバイミー」的な逃避行にも見え、そういった世俗のフィルターがかかっていない純粋な世界にも見えた。そこに達するには、バイアスを突破して、人間と人間とが向き合うしかないのだよって、是枝監督は言いたげに見えた。
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