「怪物たちと湖」怪物 pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
怪物たちと湖
僕は是枝さんの映画はあまり好きではないし、今回の作品も内容的にいって好きな話ではないけれど、それでも本作の完成度の高さには唸らされるものがあった。
冒頭から観客をぐいぐいと物語の中に引き込んでいく力、そして複雑なストーリー構成の妙に感服した。
脚本のディテールにもキラキラ光るものがあり、「巧いなぁ」と思った。もちろん役者たちの演技も素晴らしかった(安藤サクラは、こわいほど良かった)。
真相はどこに? 真実とは何か?
芥川龍之介の『藪の中』と、それを下敷きにした黒澤の『羅生門』を思い浮かべた方も多いだろう。
そして、「怪物」は誰なのか?
ときおり映し出される、陽光に照らされた湖。
その、広がりをもった美しい姿は、諍いが絶えない愚かな我々人間――“怪物”たち?――の世界を静かに見守っているようであり、また、閉塞的で陰鬱に傾くこの物語に、解放感と安らぎを与える一服の清涼剤のように感じた。
追記
鑑賞後、監督のインタビューを読んでみると、湖を登場させた意図は別のところにあるようだとわかったけれど、僕は上に書いたように感じたんだから仕方がない。「誤読」もまた観客の特権ということで、よろしくお願いします。
それから、教授、長いあいだ素敵な音楽を届けてくれてありがとう。
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