劇場公開日 2023年6月2日

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「怪物はどこにでもいるが、どこにもいない」怪物 sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5怪物はどこにでもいるが、どこにもいない

2023年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

表面上は小学校の暴力問題を描いた作品でした。ただ、どんな問題にも背景があり、そこに事実を超えた真実が眠っていました。

母親が学校を責める行動は正当だし、学校側の謝罪も当然です。でも、社会が問題をここで終わらせず、今度は被害者がある種の加害者となってしまう。そういった争いを望まない者にとって、被害者の考えを理解しようとしないものはすべてが怪物に見えてしまうのだと思います。また、そもそもの原因を理解していない親や先生さえも手前勝手な主張で争う怪物に見えてしまう。

湊くんの心理描写が生々しかったです。暴力問題が発覚する前の異常行動や学校での振る舞いなど目を覆いたくなるようなシーンもありました。それを演じた黒川想矢さんもすばらしかったです。その他、配役はピッタリなイメージでした。モンペ役の安藤サクラさんの凄み、投げやりな先生役の永山瑛太さん、絶対的な存在感の田中裕子さん。子役の柊木陽太さんも演技に見えないほどの子供らしさがすばらしかったです。

改めて、思い込みや偏見の恐ろしさを感じました。普段の生活のちょっとした出来事で誰かの怪物になっていたり、また苦手意識で誰かを怪物と決めつけてしまっていたりと、SNSやメールなど意思疎通が中途半端になっているこの時代、大人だからこそ理解しておくべき作品だったと思います。

澄千代