劇場公開日 2023年6月2日

「前半はエンタメとして引き込まれ、後半は社会は作品として見事にやられた」怪物 いたかわさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前半はエンタメとして引き込まれ、後半は社会は作品として見事にやられた

2023年6月4日
iPhoneアプリから投稿

今作は3つの視点が話が描かれる羅生門スタイル。次第に違和感の謎が明らかになったり、視点によって印象が大きく変わるからエンタメとして面白い。
まず、シングルマザーの早織の視点で進む。息子の行動や傷を不審に思い学校に訴えるも、学校側の対応のそっけなさ、担任や校長の態度に怒りと不審感を募らせる。
母親の視点からだと学校側の対応は杜撰で怒りが湧くのは分かる。
次は担任保利の視点。
意外や意外、生徒思いの良い先生でまず驚く。
悪くはないのに、問題教師に祭り上げられていくのは観ていて辛い。
担任からは早織は過保護なモンスターペアレント。生徒からも裏切られ一番可哀想。
そして、最後は早織の息子湊の視点。
これまでの謎や違和感が一気に解消していく面白さもあるが、子役二人の演技力に驚く。
湊の思いに戸惑い自分自身を怪物と感じてしまう苦しみ、葛藤は見事。
母や担任は良い人なのだが、本当の理解者ではなかった。なんの気もなく言った言葉が誰かを否定したり傷つけているんだなと突き刺さる。
それゆえに依里のまっすぐさは湊にとっては救いであるんだなぁと思った。最後はどう捉えるかだけど、感動したが少し悲しさも残った。

是枝監督の作品はゆったりとしていて判断を観客に委ねることが多い気がして苦手意識あったが、今作は脚本が坂本裕二だからか、シーンの切り替わりも早くテンポよく感じて楽しめた。

視点によって善悪は変わって見え、怪物も異なる。いや〜面白かった!

いたかわ