「緊迫感は劇場版コナン歴代最高。社会派サスペンス人間ドラマ。」名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン) K.R.C.さんの映画レビュー(感想・評価)
緊迫感は劇場版コナン歴代最高。社会派サスペンス人間ドラマ。
今作は天国へのカウントダウンとは対比的な作品で灰原の変化と彼女の今の心情に焦点を当てた映画だと私は感じた。
個人的にミステリー、アクション、ラブコメ、サスペンスの配分は2:2:1:5。
今作は映像面や作画が素晴らしかった(専門的な知識はないのでこの程度で済ます)。
ミステリーに関して。序盤に謎をいくつか提示して謎は後々回収された。私は犯人の例の描写のせいでわかってしまった。
余談だが工藤新一の最初の事件で「見逃しやすい細かな点こそ何よりも重要なんです…あの時のあなたの何気ない仕草が…ボクの目には異様な行動として焼きついていただけの事ですよ…」私は男なので違和感に気づいてしまった。こんな勘に近い当てずっぽうで犯人を当てたくなかった。
しかしコナンの仕草を伏線にしたのは考えましたね。序盤の黒の組織のコードネームの定義やインターポールの自己紹介も伏線にする。抜け目ない。正直コナン映画でハウダニット重視だった水平線上の陰謀や紺青の拳は評価がよろしくないので(他は忘れた)来年はフーダニット重視な作品であってほしい。
アクションも監督の意向なのか中盤と終盤で静と動とメリハリがあった(そうでもないけど)。サスペンス色が強いが故に動が強かった印象。最後はやっぱりコナンのキック。一瞬何があったかよくわからなかった。だがサッカーボールのシュートは好きだったので例の曲とともに流れてよかった。
問題のラブコメパート。私は新一と蘭のカップル(界隈では新蘭と呼ばれている)が本当に大好きなので、映画前に脚本家のインタビューで今作の映画の前に視聴してほしい映画で「14番目の標的」をおすすめされた時には嫌な予感はしていた。まぁ返してくれたので別にいいが(映画見た人にならわかる)。
本作はサスペンス色が強かった。まさか灰原と黒の組織が本気で接触するとは思わなかった。「どうせ夢オチで終わるんだろう」そんな事はなかった。この緊迫感は今後味わえない可能性があるのでまだご覧になってない方は体験してほしい。どうせ無事に終わるなんて考えずに。無駄な描写は特になく、コナン陣営と黒の組織の攻防の緊迫感が過去最高によくできていた。
今作の監督はこだま監督の頃の作品が好きと仰っていたが(監督のの推理とアクションとラブコメのバランスが良い、最近のコナンのアクションがアベンジャーズのようになって心配、ゼロの執行人では脚本段階であったアクションを減らしてアクションは最後だけにした等の発言から)、監督が好きな映画として挙げていたのは天国へのカウントダウンとベイカー街の亡霊。こだま監督作品の中でもラブコメがおまけで緊迫感が強かった?作品だったので今作の映画もラブコメより緊迫感が重視されていた。
そして櫻井脚本の社会派なテーマ。監視社会の恐怖はよく伝わったんじゃないかな。かつて櫻井武晴氏が手掛けた「神の憂鬱」のような作品だった。そして人種を超えた世界平和いいですね。私も小中学の頃の周りに迷惑をかけそうな数多の個性で嫌われた事があったので少し共感した。灰原もフサエさんの回で嫌がらせを受けていたと語られたが今回でその事実が深掘りされてよかったんじゃないでしょうか。灰原の映画として。
キャラクターの扱い方も良かった。今作のキャッチコピーは探偵&FBI&警察VS黒の組織ですがそれぞれに関係する探偵の相棒役?の灰原哀、FBIのジョディ・スターリング、警視庁の佐藤美和子、黒の組織に潜入しているCIAの水無怜奈。彼女らの共通点は「父と同じ職業に就き、そして父親が亡くなっている。」今作のキーパーソンの直美も立場は違えど父親が…。その点に関してキールの葛藤がよかった。キールは自分の父親のタヒの原因を作った張本人なので同じ境遇になりそうだった直美に対し彼女をより強調していたのはかなり良い。監督と脚本家がキールについて言及していたので予想通りになった。この点に関して丁寧に描写されていたのが素晴らしい。
組織間の人間ドラマもよく出来ていた。キールとバーボンはNOCなのでコナンや灰原の味方であるが組織の計画に従う立場の人間の扱いもよかった。赤井秀一の名脇役としての扱いもよかった。赤井秀一と安室透いや降谷零がかつてのコードネームの「ライ」「バーボン」と呼んでいたことには純黒のいい対比と思った。ある界隈では僕以上に深掘りしている方々がいて人気のようだ。人物の対話劇が凄い。
眠りの小五郎が久しぶりに登場してコナンとの対話でエンターテイメントしていてよかった(自作自演だが)。そしてピンガ。彼の扱いは「まぁそうなるよな。」と。
パンフレットを見た後に2回目を見て気づいたことは黒の組織のボスのメール「?????を潰せ」これはピンガでなかった。あの方がRUMに姿を見せない理由。そして黒田の意味深な発言。まさか黒の組織のボスの情報を知ることになるとは思わなかったぜ。黒鉄の書と魚影の書を見た後に3回目を見たが直美の苗字のアルジェントはイタリア語で銀を意味することを知った時「アルジェント("銀")と"グレー"ス(灰)」で銀色と灰色に分かれて対比になっていたと分かった。そして黒鉄の魚影で直美はグレースと対比になるキャラだとわかった。
あとジンにクソシステムなんて言わせないで欲しかった。ジンにクソシステムなんて単語を言わせないでくれ。名古屋はいいがクソシステムはダメだ。僕はジンが好きで今回の本作ラスボス登場のような出し方は最高でした。本当に嬉しい。そういえば烏丸とラムの描写、思ったより少なかった。
最後に来年の映画。楽しみです。大倉脚本になりますよね。昔のコナンらしい作風になって欲しいです。怪盗キッドと服部平次。世紀末の魔術師のようなクオリティになって欲しい。
もはや批評ではなく私の稚拙な言葉の羅列になってしまいましたが私の感想文もどきをご覧いただきまことにありがとうございました。