「メグレの丸めた背中が語るもの」メグレと若い女の死 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
メグレの丸めた背中が語るもの
原作シムノン、監督ルコント、主演ドパルデューでメグレ警部ときたら、フランス映画ファン必見ですが、出来はまあまあな感じでした。お話し自体はそんなに盛り上がるわけでなく、淡々とメグレの聞き込みや取り調べが繰り返され、ややもするとサスペンスとしては単調です。むしろ、脇筋とも言えるメグレとベティの交流がドラマに深みを与えていて、メグレ夫人とベティとの短い会話から、メグレが彼女の中に死んだ自分の娘を見ていることをさりげなく観客に分からせる演出は上手いです。最後に彼女を見送るシーンで、がらんとしたバスの車庫の中で佇むメグレの巨体が小さく見えるのも、彼の孤独感を表しているようで、しんみりとします。また、モノクロかと思えるくらい色調を抑えた映像は素晴らしく、曇天ばかりのパリの雰囲気や陰影感のある室内での役者の表情が見事に捉えていたと思います。役者では、久々の主演作のジェラール・ドパルデューが、いつもの情熱的な演技でなく抑えた演技を貫いているのが素晴らしい。ベティ役のジャド・ラベストは全く知らない女優さんだけど、眼力と低い声の台詞回しが印象的でした。
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