「最高のVFXと残念な人間ドラマ」ゴジラ-1.0 モアイさんの映画レビュー(感想・評価)
最高のVFXと残念な人間ドラマ
令和5年12月17日に劇場で鑑賞したものを今さらレビューです。
ハリウッドが嬉々としてゴジラを撮り続けるさなかで久しぶりの和製ゴジラ。
正直、山崎監督がメガホンを取ることに不安を感じていましたが邦画のVFXでハリウッドに引けを取らない映像を作り出したことは素直に敬意を表します。凄い!
更にはオスカー受賞!!本当に素晴らしいです。
冒頭のジュラシックパークが始まったときは、不安的中かと身構えましたが、
その後の、小型船との海上チェイス、銀座襲来は最高でした。
特に銀座に現れたゴジラをバックに往年のメインテーマが流れたときは、恥ずかしながら涙が出ました。あぁゴジラが帰ってきたんだなと、本当に最高の感覚でした。
ですが、正直ドラマパートは全然のれませんでした。
個人的には今までも散々、戦中戦後の日本人、旧日本兵や特攻隊員などを描いてきた作品を見てきていますので、そこで自分の中に植え付けられた、この時代の日本人ってこんな感じってイメージと、今作の登場人物たちってすごく乖離してるんですよね。
たしかに当時と今とでは価値観が大分違いますから、現代の観客との価値観のギャップを埋める作業は必要だと思います。
ただその作業の結果が自分には合わなかったなぁ~と、登場人物たちの考え方に疑問符が付く箇所がいくつかありました。
自分も創作物を通してでしか当時の日本人を知りませんが、
自分が機関砲を撃てなかったために見殺しにした工兵たちの写真を渡された主人公がその写真をずっと持ってますよね?
普通戦死者の写真を託されたら遺族を訪ねて渡し、どんな最後だったか遺族に報告すると思うんですよね。
訃報を聞いて泣き崩れる痛ましい遺族の姿を目の当たりにしたり、時には殴られ追い返されることもあると思いますが、自分の責任で死なせてしまった事に対する贖罪としてそういう通過儀礼って普通にあると思うのです。
しかし今作ではヒロインに自身の胸の内を吐露したことで、翌朝から少し前向きに生きようとします。いや、前向くにしてもやること違わない?
最後の脱出レバーを引く流れも(結果として引く事に異論はないのですが)
直前まであんなに自暴自棄で死にたがっていた主人公が生きる決心をした理由は何なのか?
クドクド何をどう思ったからやっぱり生きる事にしたと説明なんていらんないのですが、ほんのちょっと心境の変化を表現する何かがもう一つ欲しかったです。
基本的に勇敢な自己犠牲ではなく生命尊重主義をテーマに沿えるのは良いと思うのですが、それの表現の仕方がちょっと…でした。日本の軍備がない事情や米軍が動かない理由付けは割と効率的にされていたので、そういった工夫を人間ドラマの方にも施して欲しかったなぁと思います。
ただ当時の日本人ってこんな感じだろという先入観がなければもっとすんなり受け入れられるのかもしれませんし、アメリカで受けた理由もそういうところがあるかもしれませんね。
そんな感じで個人的な激萎えパートがちょいちょい挟まっているのですが、ゴジラがスクリーンに映るたびに盛り上がり、映画に集中させてくれます。
日本でゴジラを扱うくせに核の恐怖や警鐘といったことにほぼ触れない(広島・長崎にさえ触れない!)についてはアメリカのマーケットを睨んだものだったのだろうし、その意図通りの結果を出していたのでそれならそれで、まぁいいのではないかと思います。
回数は少ないですがまだ上映しているところはありますので、是非スクリーンで見てほしい作品です。
モアイさん
コメントバックとフォローありがとうございます。
山崎監督は、アメリカでアカデミー賞受賞後のインタビューで、日本人として「オッペンハイマー」に対するアンサー映画をいつか作らなければ…みたいなことを言ってましたから、戦争そのものに切り込んでいるつもりみたいです。
私は筆が遅くて、レビュー書くのが追いつかず、上げられてないものがたくさんあります。
マイペースでやってます。
今後ともよろしくお願いします。
この映画の人間パートについては、私も同感です。
常々思うのは「言わなきゃいいのに」ということです。
この映画について山崎監督は「戦争映画」だと言っています。だったら、あのドラマはないな…と思うんですよね。
よく、◯◯を鋭く描いた…などと宣伝する場合があるじゃないですか。宣伝なら大目に見るとして、監督自身が「◯◯を描いた」と言うのなら、ちゃんと描けてて欲しいと思っちゃいます。
バーモンドさん
共感・コメント及び山崎監督の演出手法の解説ありがとうございます!
※本当はバーモンドさんのレビューへコメントしたかったのですが、うまく投稿できなかったのでこちらで失礼します。
いや~全部具体的に説明されているとの指摘、正直愕然としています。そこまでされていても登場人物達の心情が全然わからんかったですもん!
もう山崎監督とは『人ってこうだろ!』って部分の解釈が根本的に違うんだろうなぁ~と理解するのを諦めることにしました。
個人的にはベタなドラマ大歓迎なのですが、ベタなドラマって上手くこっちの気持ちをノせてくれないと、途端に反感抱いちゃうんですよね。
バーモンドさんがご自身のレビューで書かれていた、
>『脈絡なく発狂』この辺りがノれなかった切欠かなぁ~と思います。
神木隆之介ってあまり出演作見てないのですが、『桐島、部活やめるってよ』の時はもっといい演技してた気がします。(もうだいぶ前に、ながら見しただけですが…)
でもこの映画だとまるでコントの演技のようで、ドラマに集中できませんでしたね。
>『幻想としての昭和』については北野武が「監督・ばんざい!」の中で本当の昭和はこうだったって、すっごい皮肉を挟んでいましたね(まぁこの映画もアレなんですが)
ここまでグダグダ言っといて恥ずかしいんですが自分はゴジ泣きしちゃった一人です。やっぱ音楽がよかったよなぁ~と、ストーリー的にゴジラの必然性がなくても、ゴジラでなきゃこの音楽流せませんから…。
本当は山崎監督には昔の特技監督:川北紘一のようにVFXだけ担当してくれたらと思うのですが、ここまで格が付いちゃったらそういうポジションでやるのも難しいでしょうしね。
しかも映画の企画にはめっぽう恵まれている方だと思うのでやっかいな監督です。
やっぱり主人公の心理描写、普通に見ると意味不明になりますよね。
でも簡単なんです。この山崎って監督、すべてセリフや具体的直接的シーンで説明する病があるので。
序盤で典子に機雷除去の仕事の話をするくだり、典子が「生きて」とメチャクチャ不自然に突然に強調して言うシーンがあります。
そしてコクピットには典子の写真。
これが答えです。
さらに脱出レバーひく直前に典子の写真のアップからの銀座事故前の典子のフラッシュバックが映ります。写真のアップだけでいいのに、この監督全部具体的にせりふにしたり、シーンをみせないといけない病気なんで。
他にも戦争が長引いてればと言われてキレたあとのシーンで戦争の夢を見せるシーンをいれてさらにそのあとに戦争が終われないといわせる。
凄いですよね。説明の説明の説明の,,,この映画ずっとこれですよ。僕はしつこすぎて観ててキレてしまいました。
こんなんじゃ納得いかないとは思いますが、そもそもこの映画にリアルな人間は存在せずセリフマシンしか出てこないので現実的な人間を前提に心中を類推しようとしても無意味です。