「大事なのは大義よりも命」ゴジラ-1.0 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
大事なのは大義よりも命
ゴリゴリの怪獣映画かと思いきや、人間ドラマに比重の置かれた構成で、しっかりメッセージ性もあって、過去シリーズ含めゴジラ未鑑賞の自分でもちゃんと入り込めましたし、脚本も日本映画らしくよく練られていて面白かったです。
また、海外ウケの良さそうな展開で海外でもヒットしている理由がよく分かります。CGも細部まで丁寧に作りこまれ、ハリウッド映画と比較しても遜色ない仕上がりで、音響含め終始ゴジラの迫力に圧倒されました。
以下ネタバレ。
主人公の敷島は特攻隊員でありながら機体の故障だと偽って逃げ帰り、さらに機体の修理を依頼した島でも、遭遇したゴジラに怯んで攻撃を逡巡し、仲間を見殺しにしてしまいます。
戦争が終結し、生きて無事本土に帰還した敷島ですが、自身の不甲斐なさと罪悪感に苛まれ、自分を責め葛藤する日々を送ります。さらに度々、夢に出ては思い出すゴジラの恐怖。
そんな敷島ですが、偶然出会った典子やその連れ子である明子と疑似家族のような共同生活が始まり、高収入で安定した職にも就いて徐々に落ち着きのある生活を取り戻していきます。
そんななか再び訪れた悪夢。ゴジラが東京に襲来し、敷島を助けようとした典子は爆風に巻き込まれ、消息不明となります。そして、悲しみに暮れる敷島は元軍人で構成されたゴジラ退治の民兵組織に参加することとなります。
戦艦の大砲をもろともしない頑丈な装甲を持ち、傷を負ってもすぐに再生。さらに放射熱線という強力な兵器を備えたゴジラ。そこに立ち向かうのは敗戦直後で、大半の兵器と将兵を失った日本の民兵組織。
あまりに無謀な戦いで、強大な米軍に弱小戦力で挑んだ日本という太平洋戦争の構図とも重なりますが、そんな戦いでも民兵組織は生きて帰還することを望みます。
劇中『この国は人の命を粗末にしすぎた』という指揮官の台詞が出てきますが、この映画を通して訴えたかったのは、未来ある若者に玉砕を命じ、捨て石のように扱った過去の日本軍に対するアンチテーゼであり、『大義なんかのために自分の命を無駄にするな。自分の命を大事にすることは決して否定されることでも、恥ずべき事でもない』ということなのかなと。
結局、民兵組織によるゴジラ討伐作戦は失敗するのですが、敷島は自らの飛行機をゴジラの弱点である口内に突っ込ませることで見事、ゴジラ退治に成功します。また、敷島も衝突寸前に脱出ポットから脱出し、生きて帰還することに成功します。こうして敷島は特攻から逃げ、島で仲間を見殺しにした自らの戦争に終止符を打ちます。
人間ドラマと怪獣映画を両立させるには少々時間が足りないのか、人物や心理描写の掘り下げがやや甘かったり、ストーリーの整合性に違和感を感じる場面もあるにはありますが、全体的には採点通り面白かったです。