「人は逃げる時に何処へ向かうのか。」ゴジラ-1.0 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
人は逃げる時に何処へ向かうのか。
ゴジラ-1は当初北米で1週間のみの限定公開の筈が、好評だったため期限が延長された。
海外の批評もすこぶる良く、英語圏でのSNSの評判も良い。
僕はこの監督と相性が悪く、毎回強制的に泣かせようとする圧力が苦手でしんどかった。
結果今回もしんどかった。
所々にある脚本のアラと役者に対する演出の低さ、フレームの構成による画面の美しさを殆ど感じることがなく、ただただ製作陣が好きなシーンを撮って繋げているだけ、そうとしか思えなかった。
冒頭の特攻できなかった兵の生き方がこの映画の主軸なのだが、そこはまあ良いとして、集団が逃げる時に同じ方向に逃げる非効率なことをするだろうか。
対照的なのがスピルバーグの宇宙戦争。
人々は直進しつつも脇の建物に逃げる。
多分これが普通の逃げ方だと思う。
四散しない人々の動きのせいで、かえって不自然なシーンに思える。
日本の戦艦(駆逐艦?)が途中合流して砲撃するシーンは良いが、甲板で傍観するだけの水兵のお陰で、軍人の存在を感じない。沈没するギリギリまで主砲を撃ち続けた砲兵を映すだけでももっとドラマになった筈。
後半の先頭で駆けつけた小型船団もあの短時間で曳航出来るのも違和感を感じる。その間ゴジラは待っててくれたのか。
演出面で言えば、最後の震電の突撃の無音状態。
その無音のまま突撃させればいいのに絶望感だけ演出しているので感動が弱い。あの無音状態はもっと続けば良かったと思う。
欲を言えば、海面の向こう側の太陽を影にして震電が飛び込んでくれば絵も美しかった筈。
僕には所々アラが目につき、イマイチ感情が乗らずそのまま終わる映画だった。
シンゴジラの様な理屈っぽい要素は少なく、監督のここで泣けと言う圧力に耐えながら、何故上陸したのか謎のゴジラを見守るだけの映画。
うーん、僕が求めていたのとは違う気がする。