「初代のあの人がチラつくたびに気持ちが動く」ゴジラ-1.0 ルーヤさんの映画レビュー(感想・評価)
初代のあの人がチラつくたびに気持ちが動く
今作は良かった。長年のファンからの感想は4つ
1.シリーズ内でも特にシリアス
シリーズの中でも特にシリアスな作風で、人の死とその心情を深く描き出しており、死の描写に関しては過去作と比べても非常に重厚です。
2.人類の絶望感と団結の描写が良い
人類の絶望感と団結の描写が強調されており、登場人物たちの絶妙な連携と彼らの立場の弱さが良かった。今まではどこか人類が優勢だったり、絶望感はあまりなく一部の人間しか映し出されなかったので人々の団結感というのが見えづらかった。それが今作ではよりしっかり描かれて良かった。
3. 怪獣映画らしい怪獣描写とドラマが良い
「シンゴジラ」とは異なり、本作はキャラクターの感情表現と怪獣のダイナミックな動きに焦点を当て、怪獣映画の面白さをより追求しています。
「シンゴジラ」は作品としてはありだけど、ディテールやリアリティを追求し過ぎて感情起伏の乏しいセリフ劇がメインだったので怪獣の暴走や破壊の所の印象が薄く物足りなかったが今作はそれを押し出してくれてありがたかった。
ただし、映像美や演出に関しては及第点ではあるが、ハリウッド作品の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の方が良くできていた。
4.初代のあの人との比較で生まれるラストシーン
初代の人物である芹沢博士は、主人公とは異なり、他人を寄せ付けない孤独でしたが、そのような境遇にも関わらず、生きるという強い願望がありました。しかし、博士は最終的には実際の戦いでほぼ助けられることなく、周りもゴジラに挑もうともしませんでした。そんな中で最終的に博士は自己犠牲を選ぶことになります。
一方で今作の主人公が救出される過程で、仲がそこまで良く無い整備士が脱出装置をつけて助けようとするという描写と誰も殺さないを大義に戦いに皆で挑むのは、当時の日本政府の対応の対比のみでなく芹沢博士の運命とは対照的であったのが感慨深く印象的であった。
……物語とは分かり切ってはいるのだが心の奥底で、芹沢博士が辿って欲しかったシーンが流れてきたら色々な思いが溢れてきた。
11月5日編集あり