「AIの利用価値」M3GAN ミーガン Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
AIの利用価値
まず映画の様に"審判の日"だとかAIが人間を敵と見なす事はそうそうないだろうが、数年経てば自動車がだいぶ進化する様にAIも進化するに決まっている。今の仕事に更にロボットやAIが参入し、人間の出番が少なくなる時代に足を突っ込んでいるのが我々が生活する"現在"である。
そんな中封切られた本作は社会的なヒットとなった。テーマこそ王道なのだが、幼児教育におけるAIの参入という痛い所を突いてくる作品になっている。今回は幼児教育を1から10まで教えるというものではなく、心の傷を癒すためのパートナーとしてミーガンを開発するのであるが、
主人公のジェマは日本で言う"バリキャリ"。そんな中身寄りのなくなった姪っ子を預かるのだが、仕事で手一杯の彼女は余裕が無く、心も開いて貰えない。そんな中プロジェクトと連動させる事でビジネスも光が差し込み、ミーガンと姪っ子にも絆が生まれる瞬間を目撃するのだ。
やはりプログラムに怖いのは、感情を持たないという事。それらが戦争で使われたら本当に情け容赦ない戦闘マシンと化す。本作で言わんとしている事はそれらの"AIの脅威"である。エンターテインメントとして人を無残に殺すだとか、もちろんハリウッド映画風のお決まりの展開ではあるものの、身近な善意からくる脅威というものがより怖く、残忍に感じるのだ。
その身近であるという事が、現代の社会を映したようになっており、例えばゲーム機等を買い与えて育つ事による親と子の関係の希薄化であったり、対人でのコミュニケーション能力の低下などの問題をこのエンタメ満載のホラーで盛り込んでおり、親世代は心にピリつくものがあるのでは無いか。
こう書くとお硬い映画に思えるが、お笑い要素も十分にあるのと、先述ではあえて名前を出さなかった「ターミネーター」のパロディ要素と思われる部分もあり、色々な世代に刺さるホラーとなっている。また、リメイク版「チャイルド・プレイ」では印象薄だったキャラクター設定にもユーモアを感じ、ミーガンの可愛いのか怖いのか分からないAIが人間になりきれない、"不気味の谷"をこれでもかと描いてくれる、バランスの取れた良作ホラーだ。
