「ミーガンの耐久力が戦車並みであることを別にしたら、けっこう現実にありそうな設定をたくさん盛り込んだ一作」M3GAN ミーガン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
ミーガンの耐久力が戦車並みであることを別にしたら、けっこう現実にありそうな設定をたくさん盛り込んだ一作
往年の名作『チャイルドプレイ』(1988)をはじめとして、数多くの作品が作られ、一つのジャンルとさえなっている「人形憑依もの」映画ですが、本作では学習型AIやクラウドなど、すでに実現しているものも含めた多くの先端技術を設定に取り込んでいます。それによって、このジャンルを現代にふさわしいものとしてアップデートするとともに、日常的に利用している道具の暴走、という、物語が紡ぐ恐ろしさに強い説得力を持たせました。
物語としてはホラー作品の定型的な展開をそれほど外れるものではなく、心に傷を抱えたケイディ(バイオレット・マッグロウ)はすんなりとミーガンに心開くし、ミーガンは最初から怪しさ全開で、主人公の周辺で発生する数々の怪事件に、もちろん深く関与しています。意外なのは主人公である研究者、ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)の仕事中毒っぷり、育児放棄ぶりくらいでしょうか。
現代の世相と最新技術を取り入れた、楽しく鑑賞できるホラー映画として企画、製作されたであろう本作ですが、製作陣の意図をおそらく超えるレベルで妙に観客の心を捉えたらしく、興行収入が好調というだけでなく、ミーガンが作中で披露する不気味なダンスが話題になるなど、意外な次元での盛り上がりを見せています。
本作の結末は多分、いくつかバージョンを用意して、スクリーンテストなどで決定したように思えるんだけど(結末直前の展開で内容が大きく変わる仕組みになっている)、比較的ドライなラストを採用したことも、ヒットの要因だったのかも。ただラストは、どちらかというともうちょっとミーガンとケイディとの関係に余韻を残した方がよかったんじゃあ、と思ったり。
とにかく劇場で、ミーガンの不気味かわいさと、ダンス諸々に対して突っ込みを入れつつ、ミーガンが象徴する現代技術に対する人々の過度な依存の危うさという問題提起について、ワイワイ盛り上がるのがおススメ。