劇場公開日 2023年6月9日

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「もうアナタ無しでは生きられない...  愛に飢えた幼子を支配するは最新型AIを搭載したチャッキー+貞子+ターミネーターな"悲しき玩具"映画!!」M3GAN ミーガン O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もうアナタ無しでは生きられない...  愛に飢えた幼子を支配するは最新型AIを搭載したチャッキー+貞子+ターミネーターな"悲しき玩具"映画!!

2023年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

 最新のAIを搭載した自立型の人形が両親を失った幼い少女の心の傷を埋める過程で暴走していき、彼女とその周囲を恐怖の坩堝へと突き落としていく話題沸騰のSFホラー映画。
 秘密裏に己と少女にとっての邪魔者を排除していくミーガンの凶行がまずもっての見世物小屋的スリルに満ちていて楽しいのですが、その奥には育児をAIにアウトソーシングすることに対する子どもの側の怜悧なまでの反応と理解、そして未成熟であるがゆえの依存心の累進性の危険への描写も有り、多層的な恐怖と気付きを提供してくれる一本だと思います。
 ただ、欲を言うとせっかくの超高性能の対話型AIなのだからには、自身と自身が支配下に置いたケイディとを脅かす周囲の存在を排除する際にはあくまで直接は手を下さずに"事故"を誘発し続けてその狡猾さによる恐怖を演出して欲しかった気もします。
 そしてもしそのように決定的な証拠の残らない"事故"を誘発し続けて邪魔者を排除し続けたミーガンをその制作者と金に目がくらんだ出資者たちが破壊した、となれば、"優れた知性を志向して製作されたAIに論理と子どもからの愛の総量で敗北し、暴力に訴えることでしか問題を解決し得ない人間側"というこの上ない皮肉も提示できたようにも思います。
 本作を観て"やっぱり子育てをAIに任せるのはダメなんだ"と結論付けるのは拙速で、そもそも子ども本人がその後どういう人生を歩みどういう職に就くかで"人間的思考で育つ"かそれとも"AI的思考で育つか"といった「選択」の問題にも発展していくような気はします。
 ともあれ、変にあれこれ展開を二転三転させずに過不足無く物語を走らせたことで、却っていろんな背景を感じさせる佳作だと思います。"内容はシンプルだけど、受け取るメッセージは人それぞれ"ということで。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)