「いろいろな意味で感じる恐怖!」M3GAN ミーガン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろな意味で感じる恐怖!
ホラーは苦手なのですが、予告映像で怖さより興味深さが勝ち、紹介サイトにも「サイコスリラー」と書いてあったので、「うん、これはホラーじゃないんだ」と自分に言い聞かせ、念の為に中学生の甥っ子も連れて鑑賞してきました。確かに恐怖は感じましたが、それ以上にメッセージ性のある期待以上の作品で、とてもおもしろかったです。
ストーリーは、おもちゃ会社で研究開発に携わるジェマが、AI搭載の最新型人形「M3GAN(ミーガン)」の完成に近づいた頃、交通事故で両親を亡くして失意の底にある姪ケイディを引き取ることになり、彼女の心の傷を癒すために、試験運用も兼ねてミーガンを与えたところ、二人は急速に仲良くなるが、しだいにミーガンの行き過ぎた行動が目立つようになっていくというもの。
人間の役に立つはずのAIが、その学習能力の高さから、開発者の予想を超えて発達し、やがて人間の脅威となっていくというプロットは、数多くの作品で見られる鉄板ストーリーです。本作では、そんなAIの暴走を、子ども用のおもちゃに設定したことが斬新です。これにより、単なるAI暴走クライシスではなく、育児に代表される親子のふれあいの大切さを描くことに成功しています。
劇中、ジェマがミーガン活用の利点を挙げる中で、子育てを「雑用」と表現します。突然ケイディを引き取ることになった未婚のジェマが、悪気なく放った言葉ではありますが、最近は実の子に対しても似たような感覚をもつ親が少なくないのではないでしょうか。私の身近にも、ゲーム機やスマホを与えておけば、何時間でも静かに過ごしてくれるからと、安易に機械に子守りをさせている親は少なくありません。それなのに、今度は「長時間やり過ぎだ」と子どもを責めたり、ネットゲームやSNS上で起きたトラブルの解決を学校に丸投げしたりと、傍からみればずいぶん身勝手な物言いです。
もちろん子育ての苦労は多いし、親だって自分の時間が欲しいのはわかります。でも、そうやって得た自分の時間と引き換えに、何か大切なものを失っているようにも思います。子どもが絆を結ぶべき相手は、ゲーム機やスマホやネット上の誰かではなく、身近な家族であってほしいものです。本作を通して、スマホやタブレット任せの子育ての果ての物語を観せられた気がして、ある意味ミーガンに襲われる以上の恐怖を感じました。
主演はアリソン・ウィリアムズで、自身の開発したミーガンにしだいに疑念を抱くジェマを好演しています。共演のバイオレット・マッグロウは、ミーガンに心を開きしだいに依存していく演技が秀逸でした。そしてなんといっても、絶妙にかわいくて不気味なミーガンを演じたエイミー・ドナルド、彼女の怪しい動きとキモカワダンスがクールです。