配信開始日 2022年11月11日

「空想力の大切さ」エルマーのぼうけん 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0空想力の大切さ

2022年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

傑作連発のカートゥーンサルーンの最新作。名作児童文学を『ブレッドウィナー』のノラ・トゥーミー監督が映画化した。トゥーミー監督は、空想することの大切さを描く作家だ。過酷なアフガンで生き抜くための空想力を描いた前作に対して、今度は大恐慌時代を空想力を持って生き抜いた原作者自身とも重ねて映像化していると思われる。
貧しい暮らしを余儀なくされる母子家庭の主人公。母が経営していたお店が閉店となり、屋根裏のボロアパートの部屋に引っ越し、節約する毎日。いきづまる生活のなか、母と喧嘩し飛び出した先で猫がしゃべりだし、ドラゴンのいる世界を想像しろと言う。そうしたら、本当にドラゴンのいる世界へと行くことになり、そこで大冒険を繰り広げて成長し、母の元へと帰っていく。空想が少年を成長させ、世界への理解を助けてくれる。想像力が狭くなれば世界も狭くなり、不寛容になってしまう。今、一番世界に欠けているものを描いている作品だ。

杉本穂高