「【今作は、寂れた商店街の会長のドス黒い思惑に呑み込まれ、正義を失っていく大人達と、その中で正義を貫こうとする若者男女の姿を描いたシニカルビターな、ダークで救いなき作品である。】」僕らはみーんな生きている NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、寂れた商店街の会長のドス黒い思惑に呑み込まれ、正義を失っていく大人達と、その中で正義を貫こうとする若者男女の姿を描いたシニカルビターな、ダークで救いなき作品である。】
■田舎から出て来て、都会の下町の寂れた商店街にある魚の弁当屋でアルバイトを始めた作家志望の駿(ゆうたろう)は、ある日店主で夫(ミスターちん)がいる、ゆり子(桑原麻紀)と商店街会長(渡辺裕之)の秘密を知ってしまう。
商店街会長はゆり子や商店街の男達を巻き込み、恐ろしい計画を実行していたのである。 駿は、この秘密を共有することになった先輩バイト仲間・由香(鶴嶋乃愛)との距離を少しずつ縮めていくが、町の閉塞感に呑み込まれていくのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・鑑賞中と、鑑賞後の余韻が実に嫌な気持ちになる作品である。今作が発する、人間の愚かさ、脆さ、恐ろしさに暗澹たる気持ちになる。
・夫がいるゆり子が、会長の子を宿し言いなりになり、夫に毒を少しづつ飲ませて行く状況を、会長の車の中で会長に好かれるために報告するゆり子の何とも言えない表情。
駿にその悪事を見抜かれ、告げられても”貴方は人を愛した事がないでしょう。”と言う姿と、毒を盛られている事を知っていた夫が、叫ぶように”殺すなら、早く殺せよ!”と言い毒薬の入ったビンから毒を飲む姿。
・彼の葬式が終わった後に、攻める様な目をして自分を観る由香に対し、実の父親でもある商店街会長が言った言葉。”アイツもそんな目をしていたよ。あいつは死んだんじゃない。お前を捨てて逃げたんだ。”
・駿は、商店街会長を含めた大人達の事を記事に書き、エロ雑誌の生気のない担当に渡すが”そういう記事は、受けないよ。一応上には渡すけれど・・。”と言われてしまうのである。
<そして、駿と由香は、手にいれた毒の入った瓶を開けて、大人達が食べる弁当に入れる大鍋で魚の煮物に、全部入れるのである。
今作は、寂れた商店街の会長のドス黒い思惑に呑み込まれ、正義を失っていく大人達と、その中で正義を貫こうとする若者男女の姿を描いた作品である。>
