「潰れかけてるけど」銀平町シネマブルース うにたん♪(DCPにも抜け穴あるんだ)さんの映画レビュー(感想・評価)
潰れかけてるけど
生き残る映画館って館長の作品のセレクトと作品契約の折り合いだろうと思う。
この作品の映画館は人の良い館長が借金しながら凌いでいる感じ。
世間の現実はDCPが導入されメイン作品殆どがデジタル上映、プロジェクターでの上映だ。作中の倉庫にある様なフイルムを拝む機会もすごく少なくなった。映写機作ってた会社が10年前位に撤退しはじめて、35ミリ映写機も16ミリ映写機もパーツ集めに苦労してるんじゃなかろうか…と作品に出てこない心配をしてしまう。
さて作品については従来の映画館を題材にした作品と比べると悪くもないし良くもない印象。
映画監督してた男が助監督の死で崩れ、女優の妻とも離婚。
素寒貧で地元に帰ってくる。
帰って早々にホームレスにタカられ、怪しい生活保護のNPOに引っ掛けられたりする。
気の良い映画館館長に拾ってもらい、映画館のバイトを始めるが映画館は火の車でスタッフの給料も遅配。
映画館復活のための企画に監督作品を上映する…。
無理な事やってるから映画館の復活はムリなんだけど、それぞれのキャラクターにはそれなりの答えや結末があって、人間再生物語の面がこの作品のテーマなんだろうな。
ただ、こまごまと出てくるキャラクターはユーモラスでリアリティーは無いし「映画っていいもんだろう」とホームレスの言葉にもうなずきたいが、今時は映画も観られる余裕もない窮屈な世の中、TV放送開始以降、レンタルビデオから始まる自宅での鑑賞から作品を選び放題のビデオ・オン・デマンドまで観る環境は変化した。映画を当たり前に映画館で観ると言う習慣すら世の中で変ってしまった。
今や映画館で映画を観てくれるのは、ヘビーユーザーと作品か出演者、監督のファンが中心で、稀に大ヒットが出たらライトユーザーがって感じになっている。かつて映画館を減らしていたレンタルビデオ店が閉店し始めて、映画を観たい人は居ても映画館で観ようとする人が減ってしまった様に思う。
儲かってない映画館が復活するのって、設備投資出来る余裕があっての事だから、世知辛い世の中だよ…。
あ、吉本新喜劇みたいな展開が嫌いな自分にはご都合的にうまくいかないこの展開には納得できた。奇跡は簡単に起こらないから奇跡って言うんだよな…。