「いろいろと減点対象が多すぎて…。」銀平町シネマブルース yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろと減点対象が多すぎて…。
今年49本目(合計701本目/今月(2023年2月度)15本目)。
映画自体はシンプルで、いわゆるミニシアターを救う話が大筋としてありますが、そのサブ筋として、生活保護受給の話など、明示的には出てきませんが、コロナ事情におけるミニシアターの存続危機や、個人の生活の危険が脅かされている等、今日(コロナ事情以降)の背景が見て取れます。
メインテーマは「ミニシアターの存在意義」(もっと憲法論的な話をすれば、表現の自由と営業の自由、映画館であるからこそ、表現の自由は「そこで」行使される場所、という考え方)になるのですが、そこでサブ筋として出てくる「生活保護の話」がとにかく飛びまくってワケがわからない状況になっていて、しかもエンディングロールに注意書きその他が一切ないので、これは何だかなぁ…というところです。
かつ、この映画、「そこそこ、法律系資格持ちを怒らせる」映画なのですよね…。
さっそく採点いきましょう。
※ 採点上四捨五入した結果ですが、点数上示したほうが良いのではと思えるので、今後は示すようにします。
本映画では4.2/5.0(二捨三入で4.0まで切り下げ)という扱いになります。
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(減点0.2/占有訴権について)
・ 序盤でカバンを勝手にもっていく話とそれを取り戻そうとするところです。
泥棒には不正に盗み出した物の所有権はありませんが、占有権はあります。したがって、それを真の所有者が勝手に取り戻そうとすると、占有訴権の関係で問題になります(かつ、占有訴権に関する裁判では、占有権に関する主張しかできず、所有権に関する主張はできません(民法202条))。
※ (民法202条の2)
占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
・ 本権(占有権以外。所有権や質権など)に基づいて反訴を起こすことは可能(昭和40.3.4)。
(減点0.4/生活保護の代行の話)
・ まず、生活保護の利用が適正かとうかそういう話は飛ばします。
生活保護の代行ができるのは、行政書士か弁護士の方だけですが、そのあとに生活保護の一部をピンハネしているようなシーンが出てきますので、まともな人がやっているのではなかろうということはわかります(こうした行為は、行政書士法、弁護士法のどちらでも懲戒がきます)。
したがって、無資格者が代行しているということになりますが(リアル日本でも、そういうことは一定数存在します)、生活保護申請の代行を無資格者(行政書士か弁護士以外)が行うとアウトです(そもそも、代行の場合、代行者のところに代行理由として「●●として代行を受けた」などと書くことになりますので、無資格者の代行はそもそも通りません)。
また、こうした不正な受給行為は、結局最終最後は税金から賄われているわけですから、住民監査請求(地方自治法)等の対象になりえます(住民監査請求の相手先はあくまでも行政(いい加減な生活保護申請を通すな(その結果として税金を無駄遣いするな)、という言い分)であり、そうした不正受給をした個人でもそうした不正業者でも「ありません」ので、ここの理解(請求先)には注意が必要)。
(減点0.2/スマホの大量契約の話)
・ 映画内で述べている通り、刑法上問題になることは間違いありませんが、民法上は錯誤(95)、詐欺(96)による取消の対象になるほか、結局これらは、不法行為や不当利得の話になってしまいます。映画のストーリーの展開の関係上(ネタバレ回避)、刑法を持ち出したのでしょうが、民法と刑法は別になりますので、民法上問題視することと刑法上問題視することは「両方が別々に、両方同時に動かせる」のです(刑法上問題視した場合、民事で問題にできなくなるとか、という関係にはなりません)。
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