「いかにも自然な」ガール・ピクチャー 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
いかにも自然な
2022年。アッリ・ハーパサロ監督。フィンランドの女子高生3人の青春の一コマ。母の再婚のショックから立ち直れず感情の起伏が激しい人、性に興味津々だがうまくいかずに焦っている人、フィギュアスケートの国際大会を前にスランプに陥っている人。家族、恋、将来。万国に共通の若者特有のテーマ。
よくあるといえばよくある話で、主人公の二人が自然に同性愛カップルになっていくことを除けば、既視感満載。これが例えばカナダの女子高生といわれても違和感なく受け入れてしまうだろう。現代社会は(若い世代はなおさら)そのように画一化が進んでいるといえばそれまでだが。だからこの映画の物語に異文化的なものを求めてはいけない。
映像表現としても、ドライブの解放感(と恋の絶頂感)を表現するのに窓から片手をつき出す、という「ボヴァリー夫人」からやりつくされていることが再演されている。「ボヴァリー夫人」を想起させようとしているわけではないだろうが。そういえば「ドライブ・マイ・カー」では、たばこを持った手を二人同時に上にあげるという変わったことをやっていたよなあ。この映画にはあのような異例なことが出てくることはない。
つまり、かつての物語で描かれていたこと(親の再婚、同性愛、女性の性欲など)が現代社会ではいかにも自然なこととして実際に生起するようになっており、それをどこかで見たことがある表現手法(窓から手を突き出す類の)を参考にしていかにも自然に撮るとこうなるということなのかもしれない。
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