チョコレートな人々のレビュー・感想・評価
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失敗しても温めてやり直せる
一昨年前から、阪急百貨店バレンタイン商戦企画で見つけてこちらのクオンチョコレート阪急オリジナル缶を買っていました。美味しいんです。様々なチョコの上にフルーツのトッピングがあり、一つ一つ味わいながらいただいていました。昨年ちょこっと会社の成り立ちを目にしました。その程度でした。
今年も、とオーダーしてたまたま本作を観る機会がありました。
社長の夏目さん凄いですね。僅か10年で、経営の才がおありなのですね。映像に映る部分で判断すると救世主に思えました。その人その人それぞれの特徴をよく観察してその人なら何が得意か、できるか、その為には、どんな道具でどんな作業行程にすれば上手く作業できるか、まさに上手く見つけられるのです。
環境を合わせてあげないと、と。
儲けてられるからか、(チョコは高い価格設定です。)次々と必要と考えたラボを作り、仕事しやすくされていました。
突然本人にもコントロールできずに奇声を上げ足で地団駄踏んでしまっていた人が、お気に入りの映像を作業中に絶えず流してあげると静かに作業されていました。その方のお母さんも周りで働く人たちが息子の行動を気にしないので、ずっと働かせて欲しいとおっしゃっておられました。
夏目さんは、給料にこだわってられます。
作業所などで1ヶ月働いても1万円に満たない給料、もっと稼がせてあげたいと。以前からの方は、月15万円程で最近雇用された重度の方たちには5万円渡してられました。初月給の日は従業員のお母さんたちにも来ていただいて皆和やかに過ごしてられました。お母さんたち、大変うれしそうでした。自分の子供が一日5時間しっかりと働き世間の半分ですが、時給500円の給料を得ている姿を見るのは、感慨深いのではないでしょうか。夏目さんは、まだまだこれからとも語ってられます。
また、どうしても馴染めない方もいました。
でも、神戸店開店をTVで観たからとお母さんと一緒にチョコを買いに来てられました。
LGBTでずーっと悩んで過ごして来られた方も、最初の面接で聞かれ打ち明け、隠す必要が無いと明るい表情で語っておられたのも印象深いです。せっかく大学入学したのに、くも膜下出血でマヒが残って左手が動かせない人も明るく仕事されていました。
今年他ブランド買わずにクオンのを二つ買いました。美味しいんです🍫🦁
余談:冒頭本店前で映像撮るシーン、夏目さんが、「阪急百貨店で流すのです。」東京新宿伊勢丹に次ぐ規模のお店で、今まさにバレンタイン商戦真っ盛り。チョコブランド何百か。ですからその選ばれた30ブランドに入るのはとても栄誉なことだと思います。有名国内外ブランドパティシエと肩を並べている証ですから。
積み重ねた努力、関係性、情熱は素晴らしい。でも観察者としての視点は…
現在久遠チョコレートの代表をされている夏目さんを中心に、
20年近くの歳月をかけて撮影されたドキュメンタリー映画。
障害者だから労働はできないとするのではなく、その人その人に合わせて
職場を作り上げていく努力と情熱のすさまじさを見せつけられた1時間45分だった。
「チョコレートは温めれば何度でもやり直せる」のキャッチコピーのとおり、
夏目さんの失敗も捉え、上手くいかなくとも観察と工夫で乗り越えていく。
労働から排除されてきた障害者らに労働者としての場を与え、
利益を上げることで生活の質の向上や自立に必要な給与を支払う仕組みを確立する。
自分が傍観者でいいのか、何かしなくてはならないと思わせてくれる、
とてもパワフルな映画だと思った。
その一方で、構成において夏目さんを主人公に据えて彼の語りを多く収録した結果、障害者らが夏目さんのエピソードとして取り込まれてしまったようにも見える。
過去の夏目さんの取り組みや障害者の日常生活のシーン、スタッフ同士で支え合うシーンも挿入されているが、おおよその構成はトラブルや課題が発生し、夏目さんや支援スタッフが解決策を考えて実行し、事態が改善されるという一連の繰り返しである。
長くフィクションの映画において、マジョリティのためにマイノリティが引き立て役として都合よく配置されてきた問題がある。映画において夏目さんは健常者(マジョリティ)として位置づけられており、彼に注目しすぎた結果、彼が困難を乗り越えることが主題で、その引き立て役(困難)に障害者のスタッフたちが配置されている構造になっている。
チラシやタイトルから群像劇を志向してることや、チョコレートフェアで夏目さん自身が「みんなで作ったチョコ」であることにプライドを持っていたことからしても、夏目さん以外に注目するシーンを増やした方が、より「人々」の映画になったであろう。
また、夏目さんと観察者(監督)の距離感も気になった。映画では彼の振る舞いや取り組みを肯定的に見せていく。映画によれば業界内外で久遠チョコレートが批判を受けているそうで、監督の応援したい気持ちが強く出たのかもしれない。
しかし、ある女性の面接で幼少期の事を聞いたり(職場で「どういたいか」を聞くだけでよかったはず。他者からのエピソードの押し付けはすべきではない)、その人との飲み会後の距離が新規に雇用した相手としてはアウトでは?と思わせる近さだったり、重度障害者本人の意思を確認する描写がないことから、給料日にプレゼントと共に母親にありがとうと言うように彼が指示するシーンが感謝の強要にも見えたりと、現実ではフォローがあるのかもしれないが、端から見ると危うい関係性ではと思うシーンが無批判に流される。
唯一の直接的な異議申し立ては、以前開いていたパン屋で勤務を継続できなかった障害者の母親の「(子は)健常者ではないんです。大人になってください」というシーンのみだ。
誰しも完全ではないことを見せているようにも見えるが、あまりに無批判に挿入されていることからも監督自身がこれらのシーンの問題を認識できていたかは疑わしく、ざらりざらりと砂のような不信感が混入したのはもったいなく思う。
と色々と書いたが、見終わった後には久遠チョコレートが食べたくなる映画だ。
今度食べる時は作り手や売り手たちの顔を思い浮かべながら食べることができるだろう。
差別と配慮のはざまで
2023年劇場鑑賞182本目。
社会福祉法人ひびきの上映会にて。
映画館じゃないけどチケット代払っているので入れました。
自分も障害者と関わる仕事をしていまして、その関係で観てきました。
久遠チョコレートという高級チョコレートブランドを立ち上げ積極的な障害者雇用を取り入れている方のドキュメンタリー。
自分の勤務先は生活介護事業所で、主にアルミ缶の回収と分別をした後販売しています。2023年7月時点でキロ180円で買い取ってもらっています。大体90リットルの袋に潰していない缶30袋くらいで1万円くらいでしょうか。それを20人くらいの利用者さんで均等に割って一年でならすと他にも多少の収入はありますが月で7000円くらいになります。お小遣いとしては多少の額ですが、生活ともなるとほぼなんの足しにもならない額です。
この額を少しでも上げようと頑張っている人たちの話です。ただ、やっぱりお金を稼ごうと思ったらのんびりその人のペースに任せていきましょうとはならないのが現実で、納期に間に合わなそうになったら総出で徹夜しますし、険悪な空気にもなるところを撮影して見せてくれます。
過去の映像もなぜか結構残っていて、前身のパン屋で辞めざるを得なくなったある障害の人の母親と代表との会話も残っています。若き代表はその人を健常者として扱いたいと言い、母は障害者であることを忘れないでほしい、あなたがそれを理解できるよう成長して下さいと辛辣な言葉を投げかけます。この事に関しては常々自分も感じていて、障害者だから何も分からないので怒りもしないし、自分の行動に一切の責任を負わせもしない、というのは差別なのではないか?と思いますし、かといって色々な事が脳の構造的に理解できないことを理解しろというのも酷な話なので合理的な配慮が必要だとも思います。とはいえこの子なんにも分からないからと最初から諦めていたけれど、伝えてみたらすぐ分かってくれることもあります。堂々めぐりです。
障害に合わせて色々工夫する様子が色々出てきて、その点に関しては良かったと思いますが、中盤で代表がこぼした事業を広げすぎたのか、でも広げないと給料が出せない、という葛藤が障害者の労働について回る最大の問題だと思うので、そこをもっと掘り下げて欲しかったと思います。
たくさんの問題提起と可能性。目を逸らさずに。
利益の出ないと言われる福祉分野。
そこに風穴を開けるかのように全面的に障害者雇用を取り入れつつ、かつ利益をちゃんと出し、全従業員に最低賃金以上の給与を出すことを理念に掲げる企業「久遠チョコレート」を追ったドキュメンタリー。
本作は観ながら色んなことを考えすぎてまとまってないけど思ったことを思い出せる範囲で記してみる。
まず夏目社長のバイタリティーに恐れいった。
そして久遠チョコレートを見ていると障害者雇用の現実がこれでもかというほどわかる。
本当に難しい問題だと思う。
本作を観終わった後思わず考え込んでしまった。
でも「久遠チョコレートってすごい企業だな。頑張ってるな。障害者雇用って難しい問題だよね」って他人事目線で話すのでは本作を観た甲斐がない。
社会の一員として、また明日は我が身として捉えて私も考えていかなければと改めて思う。
とはいいつつ仕事で障害者福祉分野に関わっている身としては、利益を出すことと福祉分野がうまく融合する展望はまだやっぱり持てなくて、それこそ本作で夏目社長が言うように「もがきながら」探っていくしかないんだろうな、とも思う。
あと印象的だったのは久遠チョコレートの理念はとても素晴らしいことだと思うけど、結局社長(やその家族)が身を削っている姿や、一人一人の障害に合わせておそらく採算性度外視の器具を開発したりしているのを見るに、とても危うさも感じたこと。
作中で取り上げていたような大口受注やイレギュラーが起きた時に対応できるのは、どれだけ従業員がいたとはしても、結局健常者(や障害の程度がそこまで重くない)メンバーだ。負担が片寄ることは従業員の軋轢を生みがちだというのを、社会人として日々組織の中で働く私は知っている。
(あとこの場面に関しては夏目社長の理念は否定したくないけど、健常者のマネージャーはちゃんと管理できる人材を雇ったほうがいいと思うとおせっかいなことを思ってしまった…。久遠チョコレートの理念に沿わないこととはわかっていても…という独り言)
そして一人一人に合わせるということはそれにかかるコストも発生するわけで、そしてそれは会社の経費から出すしかないわけで、かけたコストを上回る利益を従業員個人が出すのは難しいだろうし、それで利益が確保できなければ、全従業員に影響が出るわけで…。
そこを全従業員が納得できてるならいいけど、と色々考えてしまう…。
でも、そもそも障害の有無という側面だけでなく、人間はパーソナリティという側面でもあまりに多様で、そんな人たちが集まって同じ目的に向かうのはそもそも難しいことだよな、とも改めて思った。
作中に登場した匹田さんや美香ちゃん、よしのぶさんやそして彼らの家族の様子を思い出しながら、個人の長所や特性を活かす働き方や可能性について私も考えていきたい。
(しかし美香ちゃんのお母さんの様子や夏目社長に言っていた「大人になってください」はちょっと忘れられないと思う。綺麗事だけでは生きていられないと思わせる言葉の重さ。)
あと久遠チョコレートを本当に長期的なビジネスとして成り立たせるには「障害者の人たちが頑張って作ってるから買って応援しよう」ではだめで(いや、それはそれで一つのビジネスなんだけど)、「あそこのチョコレートは美味しいから買おう」にならないといけない。
久遠チョコレートはそこがうまく機能しているのがビジネスモデルとして素晴らしいと思う。
そしてそれは障害者雇用において忘れてはいけない観点だと思う。
ここは押さえなくてはいけない。
最後に、ナレーションの宮本信子さんの声や話し方は素敵だなあと改めて思った。
理想が現実になる日を見守りたい。
詭弁とも感じるし
綺麗事だな。と正直思う。
受注を受ければ生産から納品までが
その企業の責任であって
行程を把握していないのは
言語道断だと思うし
「いつもだと」と言うのであれば
きちんと対策をとるべきだと思う。
成長を期待するのも大切ではあるが
それでは企業の信頼度が失墜する可能性も
ある事由だったでしょう。
結局 お金をかけて業者委託。
発注先に迷惑をかけるわけにはいかないので、
そこの判断はただしいけれど
間に合ったから?(そこまでは映されなかった)
よかったものの一歩間違えば大事故🤢
この時の事を夏目氏が語ってはいたけど
素晴らしい考えだと思う反面
美香さんのお母さんがあの時放った言葉
「もう少し大人に」とも思った。
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とはいえ
「温めれば何度だってやり直せる」
このコンセプトを聞いた時に
挫けても倒れても立ち直る夏目氏の
意志の強さと根性に感服したし
久遠チョコレートは
ゆっくり着実に前に進んでいるし
「多様性」を求められるこの時代
久遠チョコレートほどの覚悟と信念を持って
それらに取り組んでいる企業が
どれほどあるのだろう。とは思う。
お給料を手渡しする際のイベント
障害がある子供たちを支える親(特に母親)へ
感謝の気持ちを伝える場を設けるなんて
粋だし、同じ母親という立場で泣けてきた。
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ラスト、満面の笑みでカメラマンに
「見ててください、絶対実現させるから」
自信に満ちた表情は、青空に相応しくみえた😆
失敗も成長の過程
会社を経営している夏目氏は、小学生時代の苦い後悔を抱え、若い頃から高賃金を目指したパン屋を経営していたが、経営者夫婦は無給で、一人の女性は作業の遅れのために仲間と上手くいかず、辞めてしまった。確かにパンは廃棄率も高く、無駄も多かったようである。パンフレットによると、辞めた人との再会の予定を撮影者は把握していたらしい。今の会社でも、大口注文に対応するための生産管理業務が上手くいかず、責任を果たしたとは言えない業務運営振りが描かれていたり、重度者のための作業場では、一日5時間労働で月給約5万円出せる段階がやっとというところも報告されていた。一企業で超人的な努力をしなくても、あるいは働けない人にも所得保障を整えていくことを考えてほしいものである。チョコレートは有名シェフ店と肩を並べるほどの評判のようなので買って食べてみると、軟らかめでナッツの感触もあり、美味しかった。
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