「「バカだけどクズじゃない」って誰かに言ってみたい!」OUT おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
「バカだけどクズじゃない」って誰かに言ってみたい!
ケンカ映画は好きじゃないので観ないのですが、本作の試写会の高評価レビューにつられて、鑑賞してきました。評判通りなかなか熱い物語でおもしろかったです。
ストーリーは、少年院から出所して叔父夫妻の営む焼肉屋で働きながら更生を目指す不良・井口達也が、ひょんなことから暴走族「斬人」の副総長・安倍要と知り合ったことをきっかけに、要の仲間や溜まり場となっているボウリング場のバイト・千紘らと交流していく中で、半グレ集団・爆羅漢との抗争に巻き込まれていくというもの。
全編通してケンカシーンはもちろん何度かありますが、思ったほど多くなく、それ以上に仲間を思う男同士の熱い友情が印象的な作品でした。中でも、達也と要との友情が熱いです。正直言って、ただ暴れたくてケンカを求める主人公の達也になかなか共感できなかったのですが、そんな達也の根っこの部分をきちんと見極め、不器用ながらも友情を育む要の姿が熱いです。彼が本作の魅力を高めていると言ってもいいぐらい、存在感が光っています。最後の爆羅漢へのカチコミには参加させてやりたかったです。
他にも、飄々としながらもキレのある体捌きで相手をのしていく総長の丹沢敦司、それぞれの戦闘スタイルと二つ名をもつ個性豊かな斬人の幹部たち、達也の更生を信じて見守る叔父夫妻など、魅力的な人物が多かったです。そんな温かい人たちに囲まれ、おじちゃんの「バカだけどクズじゃない」という言葉に支えられて、達也が少しずつ心を開く姿もよかったです。
その一方で、本物のクズとして描かれる爆羅漢の三兄弟もよかったです。その見事なクズっぷりが、斬人側を引き立てています。中でも三男のスパナヌンチャクはマジで怖かったです。あれを容赦なく振り回すなんて、奴がいちばんアタオカだと思います。でも、最後に見せた行動は、心の奥にくすぶり続けていた思いが形となって表れたようでもあり、彼もまた「バカだけどクズじゃない」ということなのでしょうか。
さて、ラストは大団円かと思いきや、なんだか不穏な空気を醸して終わります。これは次作に続くのでしょうか。続編があれば観てみたいです。
主演は倉悠貴くんで、体当たりの演技で達也を好演しています。脇を固めるのは、水上恒司くん、醍醐虎汰朗くん、与田祐希さん、杉本哲太さんら。中でも水上恒司くんは、これまでの役の印象をガラリと変える演技で、主役を食うぐらいの存在感を放っています。