「Juvenile」Single8 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Juvenile
今年とても多い映画作りの映画。しかし、フィルムに魅せられた少年の映画や、映画作りの皮を被った学園ムービーや、映画館の物語と見せかけて心の弱さを描いた作品だったりと、一つの作品を作ることに注力した作品が無かったなぁと思ったところに傑作が飛び込んできました。
スターウォーズ公開当時に、衝撃を受けた少年が文化祭で映画を上映するために奮闘するジュブナイル映画です。こういうの大好物です。
自分はスターウォーズはリアル視聴できなかった人間なので、当時の衝撃なんかは分からないのですが、登場人物たちの驚きっぷりや、工夫した構図での宇宙船の撮影の斬新さで、その衝撃は偉大だったんだなと思います。
気になる女の子をヒロインに据えるというのも、THE・青春だなと思いましたし、そのヒロインが演技上手というミラクル。高石あかりさんの魅力がこれでもかと発揮されていました。1ショット1ショット毎に高石さん史上最高が更新されていきました。そりゃみんな惚れるよなぁと思いました。最終的には留年したバンドマンの先輩に目を奪われているショットで、脈が無いことを察するという寂しげなラストショットになりましたが、映画が好評を得て何度も上映できることに喜びを感じて走り出す、「ファーストシーンとラストシーンで主人公がどれだけ成長できるか」と映画内で何度も言われていましたが、主人公はしっかりと成長できていたと思います。
劇中に出てくる作品も元ネタ2作品がありつつも、しっかりオマージュした「タイム・リバース」の面白さは素晴らしく、逆再生や画角の隙をついた見せ方、フィルムの反転など、現代ではとても簡単になった撮影も40年以上前ではこんなにも大変なものだったのだなと身をもって感じました。宇宙船が着陸する部分を撮影する際は一枚挟んだプレートに黒いシートを切り取って隠して撮影したり、人がいるパターンをと人がいないパターの撮影をして即座に消える演出をしたり、同一人物を演じる際、フィルムを分けて一緒に流したり、アテレコで声を吹き込んだりと、映画作りの1から10まで堪能できました。「映画大好きポンポさん」と同じ、編集という映画の集大成まで楽しめました。
フィルムを1つ1つ削って、それをコマ送りにしてアニメにした「MARK」の完成度はえげつなかったです。しっかり見応えがありましたし、実在するものというのもまた衝撃的でした。「爪」の人食いクマ、元ネタも「グリズリー」より先にアイデアとして出ていたのは画期的でした。食われる瞬間にハリボテがグチャっとなるのが面白かったです。にしてもポスターの完成度が高い…!現代のエクストリーム配給作品の多くよりもクオリティは高いと思います。
小規模公開になるのは仕方ないけれど、観ないのはもっと勿体無いと思う傑作でした。映画撮りたいなーとぼんやり思いました。変態ホラー映画を撮ってみたいです。
鑑賞日 4/4
鑑賞時間 14:35〜16:33
座席 D-2