あしたの少女のレビュー・感想・評価
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一筋の光が導く先が希望とは限らない。
活発な女子高生ソヒが実習先のコールセンターで心を病み最悪の選択をしてしまうまで追い詰められる姿を描く前半と、ソヒの自殺を担当する女性刑事ユジンがその足跡を辿りながら真相に迫ってゆく後半の2部構成になっていて、この作り方がものすごくうまい。
上司は会社の為、学校は就業率の為。若者達の置かれた劣悪とも言える労働環境には目をつむり、いざ真実を突き付けられると誰もが目を背ける。親はコトが起こって初めて我が子の痛みを知る。
ソヒがこの世に残した唯一の動画は、労働者から都合よく搾取することを覚えた大人達への強烈なメッセージ。「嫌なら辞めればいい」が通用しない環境もあるのだと思い知らされた。そして人は静かに、ひとりぼっちで疲弊してゆくということも。誰もキャッチできなかったSOS。しかもこの出来事が実話ベースというのだから辛すぎる。
とても良質な1本でした。
よくぞここまで描いてくれた
隣国でありながら、知らないことの多い韓国
ごくごく普通の明るい高校生が、実習の現場で疲れ果て、人間性を擦り減らし、自分で解決できなくなって自死をする ぺ・ドゥナ演じる刑事が職場・学校、そして家族・友人と彼女のたどった一つ一つの苦しみを解き明かしていくのだけれども、彼女の命を救うことはできなかった 不運だの事故だという言葉で隠蔽しようとする「やつら」に、対抗しきれな
い無念さを、刑事と共に感じる後半であった
皆さんのこのレビューを事前に読んで、つらい気持ちになることがわかっていても、正義を貫いてくれる、この刑事のような人がいることを期待する思いが、この作品をどうしても観たいという気持ちにさせてくれた
ぺ・ドゥナの日本公開の前作「私の少女」でも、ほとんど笑顔をみせなくても、韓国に蔓延る封建的な考えに立ち向かう警察官の役であった 前作は地方の農村、本作は都市部であろうが、国民全体とりわけ子どもの置かれている状況には、日本とはまた違った国民の間の格差を感じるものだった
ブラック企業、という言葉がついこの間までよく使われていた 「派遣」「非正規」「氷河期」は日本においては今の40代あたりが最も多いのだろうか
日本でも多くなった「コールセンター」、PCでの在宅勤務、マニュアルさえあればノルマ達成だけが仕事の尺度となる恐ろしさを、子ども(高校生)の視点でよく描いてくれたと思います ポケットに手を突っ込んでいるぺ・ドゥナ、格好良かった
(8月31日 MOVIX堺 にて鑑賞)
タイトルなし
学ぶべきところは多い
長編2作目ということだが(残念ながら前作は未見)、見事。
韓国でまさか高校生を対象にしたこんな搾取が行われているとは思いもよらなかった。確かに韓国は日本以上の受験社会と聞くが、進学しない者にはこうした現実があるとは。また前半を見ていると、まったく日本と同様の抑圧や逃げ道の塞ぎ方で、どちらの国も社会的弱者を同じようなやり口で搾取しているのだなとよく分かる。
後半でペ・ドゥナ扮する刑事が暴いてゆくとおり、責を負うべき立場の者が誰ひとり子供たち(敢えてそう言おう)のことを気に掛けていない、そしてそれを反省もしていない、ということが分かる。
日本と違うのは、それをちゃんとこうやって公にする人がおり、その結果ちゃんと法律が作られていること。日本はどうだろう、と考えると暗澹となる。
政治家がこども食堂を応援してるようでは駄目だろ。こども食堂が不要な社会を作らなければ。
学ぶべきところは多い…
韓国の全ての高校をビビらせる感じの作品。 本年度ベスト!!
本作は多分フィクションだと思うけど、かなり衝撃的な内容だった。
ダンスが好きな女子高生のソヒ。
実習生としてコールセンターで働く事になり予想を反した仕事に悩み自殺する展開。
本作はソヒがメインと思いきや、自殺した原因を解き明かして行く刑事がメインのストーリー。
コールセンターのブラック企業的な感じが衝撃的だったけど、それ以上に高校の体質が最悪過ぎた。
この酷すぎる展開に不思議と終始引き込まれた感じ。
スクリーンから目が離せない。
中盤から女性刑事のユジンがソヒが自殺した原因を捜査する展開が熱い!
ユジン一人でこの問題は解決出来ない感じが切な過ぎる!
関係無いけどユジンの着ているアウターがお洒落でカッコ良い(笑)
本作は刑事のユジンが主役だった感じ。
鑑賞中、印象に残るのは高校生のソヒがお酒を飲むシーン。
調べたら韓国では高校3年の1月からお酒が購入出来るらしい。
更に飲酒の年齢は決まっていない事に驚く。
女子高生が一人でお店で「ビール2本」って注文するのにビックリ。
韓国凄いな(笑)
このお店で多分、ソヒが自殺を決意したと思われる光を使ったシーンがあるんだけど、その意味がよく解らない。
自分には光があたらない人生ってメッセージなのか?
と、自分的に強引に解釈。
ハッピーエンドで終わる訳でも無く、モヤモヤ感が残る最後だったけど本作を鑑賞した事に後悔は無し(笑)
自分の中では記憶に残る作品って感じ。
ソヒのダンスには切れが無いと思ったのは自分だけなのか?(笑)
気になります( ´∀`)
社会を動かす
理不尽
高校生(実習生)パートと警察パートの二部構成ですが、大どんでん返しがあるわけでもなく、後半の警察パートは展開読めて退屈でした。
音楽をほとんど使わない演出なので、静かなシーンで眠くなってしまいました。
資本主義社会の行き着く先
『私の少女』のチョン・ジュリ監督とペ・ドゥナの再タッグということで興味が湧き見に行きました。
この日本タイトル、いくら前作にかけていると言っても分かり難く過ぎでしょ。原題の「ネクスト・ソヒ」ならば観終わってからなるほどと思えるのですけどね。
しかし、久々に心にグサッと来る強烈な韓国映画でした。
テーマ的には韓国映画よりも日本のインディー作品の方が得意とする内容の様にも感じられましたが、このテーマなら時代的に今の韓国の方が合っていたのでしょうね。
現在68歳の日本人の私からすると、昔の苦い思い出を呼び起こされる様な作品でありました。
“平成”が始まる(今から34年前)高度経済成長のピークから一気にバブルが崩壊した、1980年後半から2000年位までの日本の社会をこの作品を見ながら思い出していましたが、まあこの時期の日本は労働者派遣法の流れとリンクし、私も派遣会社を転々としていた時期でもあるので、本作で描かれていた資本主義社会の根本的な構造悪は身に染みて生きていました。
資本主義の高度成長というのはアジアで(いや、世界で)日本は先頭ランナーとして走っていたので崩壊も一番早かったのでしょう。で、中国や韓国は今現在がその頃の日本と似た状況になっているのだと思います。
そして今の韓国社会が、本作で描かれていた様な(本作は実話を基にしたフィクション)世間擦れした大人達は社会悪を当然の様にスルー出来るメンタルに(改悪)され、それが“悪”であることにも気づけず(忘れてしまい)、社会全体が感覚麻痺状態となった結果、一番純粋で弱い者に皺寄せが来るような、こんな恐ろしい社会派映画を(社会悪に侵されていない人間が)作らざる得ない状況になってしまっているという証なのでしょうね。
なので本作で描かれている社会悪が、“誰が悪い”なんて単純な話ではないのは分かっているし、簡単に修正できる類のものでもないのは分かっているのだけど、何故一番先頭を走り転落した日本を反面教師とせず、どの国もどの国も同じ過ちを犯し同じ道を歩むのか?そんな気持ちで本作を見てしまいました。
本当にもっとマシな社会を作る事が可能なのか?、そこに本来の人間の本性があるのか?
日本の場合はあまりにも長く低成長が続いたので、全体的にちょっとした諦念に達したような国民性になって来ている様な気もしますが、相も変わらず“ビッグモーター”のニュースが氾濫している様な民度の低さもあり、つくづく本作のメッセージの難しさを感じてしまいます。
体のいい奴隷
僅か5年前、コロナ前に起きた事件がモチーフと聞けば尚更、観終わって改めて衝撃、そして闇の深さに不安を覚えます。
日本でもつい最近、某中古車販売業者のブラックな雇用契約が話題になり、この手の問題はいつまで経ってもなくなることはないことを実感しましたが、本作で扱われた事件を作品を通して知れば、根本になる原因はけして企業だけにあるわけでないことが解ります。
そして、その犠牲になっているのがまだ未成年と思われる商業高校生たち。(ガンガン飲酒しているのはご愛敬)「実習生」という立場で面接の翌日にいきなり現場に入れられ、数日の研修(ただし、マニュアルと先輩を見て覚えろというだけのもの)で即実務、いきなりノルマを課され成績が悪いと怒鳴られる。はっきり言ってどう見ても体のいい奴隷です。
この事件の犠牲者の一人、ソヒは明るく人当たりもいい、頑張り屋で、頭のいい女性です。理不尽なことには意見を返し、頭に血が上ると手が出てしまう、、のは正しくはない行動ですが、十分に同情できるだけの理由があり正義感が強い人。だからこそ、強く感情移入して観ながら、彼女が追い詰められる様を見て胸が締め付けられます。ソヒ役のキム・シウンはドラマ出演を中心に活躍する新進女優とのことで、ドラマまで手が回らない私はお初でしたが、難しい役柄を見事にこなしているように見えました。
そして、偶然のきっかけで事件を担当することとなった刑事ユジン。ソヒを見て見覚えがあることに気づき、なんとなく引っ掛かりを覚えるわけですが、実際に調べを進めていくうちに知るソヒという女性と、この事件の背景にある問題を知るにつれて、ユジン自身も感情移入を深めていく様に胸が熱くなります。特にそれが判りやすいのは、解剖のための「申請書」と「報告書」の2度の「サイン」。基本クールで感情を表に出さないユジンですが、静かに闘志を抱く様で演ずるペ・ドゥナ、さすがです。
疲れ切った表情でビールをあおり、ふと見た足元に差し込む陽の光に気づいてその方向を見つめる様子。事件前に一瞬とは言え繋がるチャンスがあったソヒとユジン。ソヒにはユジンのような相談できる人が居ればと思え、またユジン自身もそう思ってるからこその悔しさにも共感するのです。
好みの一本です。
問題提起
大手通信会社の下請けの超ブラックなコールセンターで実習生として働くことになったJKの話。
聞いたことない会社だけど、大手の関連会社だからということで担任から強く勧められて働き始めたが、会社の体制と風土、そして学校からのプレッシャーに疲弊して行くストーリー。
韓国では高校生にもインターンとかあるんですね…もしかして今は日本でもあるのかな?
何でもかんでもブラックという風潮は好きではないが、働いた対価を貰えないのは問題外だし、契約書が2種類っていうのも…。
若く知見がない主人公達には戦う手段がないのは解るものの、個人的には主人公の様にはなるタイプでは断じてなく感情的に理解できないところも多いいけれど、インターンじゃないにせよ日本でも同じ様な話しは多々あるし身につまされるものがある。
韓国映画で日本で公開されるものにしてはなかなか珍しいテイストの作品で、特に終盤の刑事の絶句は溜まらないものがあった。
ただ、映画として締めはもう一声欲しかった。
今の時代、戦う手段はいくらでもあるし、日本なら労基もあるし、泣き寝入りしない様にしましょうね。
強烈すぎるので心身ともに元気な時に見てください。
見ていてつらくなる。
担任の教師の言動に吐き気がした。
なのに、もしかしたら悪い人ではないのかも、とも思ってしまう。
韓国の映画はレベルが高いですね。
【名ばかりの"現場実習"にダンスの夢を持っていた女子高生が呑み込まれる様を描いた鑑賞していてキツイ作品。後半、ペ・ドゥナ演じる女性刑事が韓国社会の歪みを眼光鋭く暴いて行く姿は心に沁みます。】
◼️教育庁からの補助金目当てに、企業への実習生派遣を実習現場も確認せずに続ける職業系高校と、安価な労働力として受け入れるブラック企業。
今作品は、そんな韓国の体質を暴き出し、企業側の責務を強化する改正法案を韓国国会で通過させた意義ある作品である。
この改正法案は通称「次のソヒ防止法」とも呼ばれているそうである。
今作の原題は「NEXT SOHEE」である。
又、今作品はフライヤーにも記載されている通り2017年、全州市で起きた女子高生の自殺を題材にしている作品でもある。
◆感想
・前半は鑑賞していてかなり精神的にキツイ。ソヒが送り込まれたコールセンターでは、顧客から罵声を浴びながら、解約を阻止する仕事が行われている。
- 信頼していたチーム長が、会社の方針に疑義を抱き、疲れ果て自殺する。会社は、彼の葬儀に行く事を社員に禁ずるが、ソヒだけが葬儀に出る。冒頭の焼き肉屋のシーンを観ても分かるが、ソヒは正義感が強いのである。故に会社側から目を付けられ、精神的に追い詰められるのである。-
・ソヒが自殺した後に登場する女性刑事、オ・ユジンを演じたペ・ドゥナが、鋭い眼光で、コールセンターの愚かしき社員達や、学校の担任を鋭く追及していく姿は見応えがある。
- 彼女の怒りの鋭い眼光から目を逸らす会社側の愚かしき社員達。-
・後半では、背景に韓国の貧富の差や、日本より、遥かに厳しい学歴社会の実態がある事も描かれている。
・ペ・ドゥナの怒りを抑制した演技も見応えがある。ソヒのスマホが自殺した湖から発見され、残されていたソヒが楽しそうにダンスする姿を見て、涙を流す姿。
<今作品により、企業側の責務を強化する法案が韓国国会を通過した事は、上記した通りだが、数年前に厚生労働省が"技能実習制度"を導入しながら、結局、アジアの若い外国人を安価な労働力として使い回している日本(技能実習制度の内容が、ダッチロールの如く二転三転している事は周知の事実である。)は、大丈夫なのだろうか。と思ってしまった作品でもある。>
根深い社会問題
守られなかった少女、責任を問われない大人たち
つらさを聞き理解しようとする側でいたい
仕事のやりがいってなんだろうと思うことがある。高い給料や、社会への貢献度、仕事そのものの面白さの人もいるし、好きなことを仕事にしていることでやりがいを持つ人もいる。精神的にしんどくても人の役に立っていたり、好きなことならがんばれるのかもしれない。でも、顧客から罵倒され、会社や上司からは厳しいノルマを課され、でも薄給だったりしたらやってられない。
本作に登場するソヒは、実習としてインターネット通信のコールセンターで働くことになるが、徐々にこの職場の過酷な環境に絶えられなくなっていく。客や上司から罵倒され、安月給で使われるのだから当然だ。一番の問題だと感じたのは、ソヒのつらさを聞いてくれる大人が誰もいなかったということ。実の両親でさえ。後半の捜査パートになってから、彼女の周りの大人たちの口から出てくる言葉の数々がとても醜悪だった。会社の上司も学校の先生も酷かったが、個人的には父親の態度に鼻白んでしまった。お前はソヒの何を聞いてあげられたんだ?そもそも聞こうとしていたのか?と。身を守るためにあんな醜悪な言葉を述べる側には行きたくない。つらさを聞き、理解しようとする側でいたいものだ。
さて、後半はユジン刑事がソヒの死の真相を探ろうとする話に転換する。しかし彼女のしている捜査は警察の範疇を軽く超えていて、苦情が来たり変なニュースになるのもわかる。とても感情的だったし。ダンス仲間として顔見知りなだけのユジン刑事だけが彼女の思いを理解しようとするのは正義感だけではないはずだが、そのへんの背景がハッキリしないのは残念だった。でも、周りの大人たちに比べるとユジン刑事の行動だけがこの映画の救いだ。正直何も解決したとは言えない。実際にあったことを題材にしているからこそ、誰かを悪者に仕立て上げるのは難しいのだろう。
そもそも、この事件では誰が一番悪いんだ?をテーマに喧々諤々の議論ができそうなくらいに重たい問題だ。それを重たいテーマをきちんと伝えつつ、感動の物語として仕上げてくるのとてもうまかった。
働いて金を稼ぐという現実
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