「反日映画?そんな訳はないでしょう。」非常宣言 kisi0818さんの映画レビュー(感想・評価)
反日映画?そんな訳はないでしょう。
議論が分かれる日本描写について詳しくレビューしたいと思います。
この映画の大きなテーマとして自己犠牲が取り上げられていると思うんですが、正体不明の高致死性ウイルスによるバイオテロが発生した旅客機ですでに数十人の死者が出ている。
ウイルスのサンプルや抗ウイルス薬やワクチンは流出元の外資系製薬会社から確保済みだが、犯人は改良を加えたため変異している可能性が高く、抗ウイルス薬は利くかどうかは不明瞭。挙げ句の果てに行き先のアメリカが着陸を拒否し、乗客の母国である韓国ですら受け入れに及び腰で世論が二分されている状況…そんな状況で日本が受け入れる訳が無いだろうってのは当たり前なんです。
仁川からのハワイ便だったから日本と航空自衛隊のF-2戦闘機がスクランブルに出てきただけであって、仮にKI501便がバリ島かシンガポール行きなら台湾がF-CK-1で同じことをしたでしょうし、欧州便なら中国がJ-10で同じことをしたでしょう。この映画において日本の役回りとは国籍というしがらみのない相手ならどういう反応をするのかという乗員乗客や韓国国民に対する状況の提示にすぎないと思います。逆の立場なら終盤KI501便を護衛するために飛来したF-15Kで同じことをするでしょ?という投げかけなんです。
だからきちんと日本に対する劇中でのフォローはされていたし、そこまで憎悪を煽るような描写には見えなかった。あとはあの場面で日本が受け入れてしまうとそもそも話が成立しなくなってしまうことも付け加える必要があるでしょう。
そういう中において航空自衛隊のF-2パイロットがみせた成田上空での威嚇射撃や体当たりをしてでも着陸を止めさせようとしたというのは、別に反日描写でもなんでもなく寧ろ(作劇上)美味しい役回りだったのかなとは思うんですよね。
スクランブルに上がったF-2のパイロットの吐息や台詞を観ていると万一になれば身を挺しててでも止める覚悟はしているが、なんとか諦めてくれとというような迷いや焦りのようなものも感じられたのがとても好印象でした。恐らく、あの航空自衛隊のパイロットは韓国国外で唯一主人公や乗員乗客と立場を同じくした登場人物だったと思います。
ただ、ちょっと気になったのは成田の管制官や空自パイロットがカタコトだったこと、某総理っぽい外務大臣のセリフの言い回しくらいですかね。あとは燃料がどう考えても足りないだろうとかちょこちょこツッコミどころはありますけども作劇上の都合で妥協できる範囲でしょう。
ミリオタ的観点からだと終盤出てきたF-15Kと外見が殆ど同じだからという理由でモデルを使い回せるF-15Jを出すんじゃなくてちゃんと首都防空を担う百里基地配備のF-2を出してくれたのも凄い良かった。
嘘をつくところとこだわるところのバランスが取れた良い映画だったと思います。